マカラーニャの森──静寂の中で深い霧が漂う森の奥。
青く淡い光が、静かな湖面に揺らめいていた。
森の一角、セーブスフィアの近くに、小さな人影が倒れている。
金色の髪が葉の上に広がり、微かな息遣いが森の静寂に溶け込んでいた。
「……──おい!しっかりしろ!」
力強い声が響く。
それは、遠くにいるようで、すぐそばにあるような不思議な感覚だった。
「ん……」
意識がぼんやりと浮上していく。
森の匂い、湿った土の感触、頬に触れる冷たい風。
(あたし……どうしちゃったんだろ……)
ユウナん……?
パイン……?
誰かを呼ぶように、微かに唇が動く。
しかし、返ってきたのは──
「おい!」
はっと目を開いた。
視界に飛び込んできたのは、黒と赤の装束を纏った男。
燃えるような紅い瞳が、真剣な光を宿してこちらを覗き込んでいる。
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