人目を忍び、マカラーニャの森を抜け、静寂に包まれた夜の聖ベベル宮へと足を踏み入れる。荘厳な回廊の陰に身を寄せ、慎重に歩を進めながらも、僧兵たちの巡回の気配を意識し続ける時間は、リュックにとって息苦しいほどの緊張を強いるものだった。
だが、そんな彼女とは対照的に、アーロンの足取りには迷いがない。彼にとってこの場所は慣れ親しんだ領域であり、避けるべき道も、すれ違う者の気配も、まるで手のひらを読むかのように把握しているのだろう。
ようやく辿り着いた先は、余計な装飾を排した質実な一室。
僧兵の中でも指導的な役割を担う者には、それに見合った待遇が与えられる。
アーロンは僧兵士長の立場にあり、部隊の統率に関わりながら、次代の幹部候補としても期待されているようだった。
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