その声で喋るな記憶、知識、感情、言語…
流れてくる情報により、更に強くなる
生前最初で最後に口にした餌は中々の力があったのか、言語のほかに治癒能力を与え、残した
その後、すぐに生を終えたのだが、影として再び生まれ変わっても知識と治癒能力は失われず軍団唯一の力を手にしている…使う機会はほぼ無いが
主に主君と他の兵士との意思疎通をする際、あの男から得た知識と言語はとても役に立っていたが誤算が1つだけあった
王たる威厳を周囲に放ち、圧倒的な存在を示す主君が軍団の中で…あの古参の赤毛の騎士長も観たことが無いだろう…安堵し、はにかみ笑い無邪気な姿が情報として残っていたのだ、…その時の男が抱えた感情、思考も事細かに残っており、その情報にジワジワと蝕まれ、苛立つ
あの餌は主君にとって、かけがえの無い存在だったのだろう、餌の分際でなんと浅ましい
主君より弱い存在が何故隣を我が物顔で占領し、想いを伝えられるのか、何故主君はそれを受け入れるのか
私の方がパワーも、スピードも、治癒能力も…主君の命令を忠実にこなせる存在であるのに、何故私を見てくださらない…?
あの餌から得た情報は沢山あり、全て私の方が優れているのに何故…なぜナゼ…
姿が違うから…?だが、あの姿になるには食べた部位が少なすぎた…それに戦闘が好きな主君に仕えるにはこの体でなくては力を発揮できない
「主君…しゅくん……み、ずしのさん…水篠、さん」
情報を頼りに何度も何度も繰り返し練習する
姿が変われないのなら、声で主君を癒やすしかない…
私は誰よりも優れた存在なのだ、主君が望むものを叶えなければならない
「水篠さん…」
顔を青ざめ、立ち尽くす主君に首を傾げる
情報の中では主君は笑って返事をしていたのに、なぜ?
「どうかされましたか?水篠さん…旬…?」
そう呼べは眉間にしわを寄せたかと思えば、俯き頭を抱え首を振る主君に私は、どうして良いのか分からなくなる、そんな主君の姿は情報に無かったからだ
私はただ、主君を喜ばせたかっただけなのになぜ…?