波乱の後見慣れた背を、音もなく追いかけている。短い金髪に紅白の革ジャン、ロック・ハワードの後姿だ。やたらと潜められた足音は後ろめたさの証だろう。居候とはいえ、現時点では彼の帰る家はこの屋敷である。ここに連れてこられた当初のロックならば話は別だが、カインに同情めいたものを抱いてしまったらしい今、彼は決してこの場所を警戒しない。
よく知る男を、よく知る場所で、普段は敵に使うような技を駆使しながら追跡するというのは大層居心地が悪かった。しかし今は非常事態。もやつく胸を致し方ないのだからと自ら宥めて、文字通り足音を殺す。
(足音が乱雑。歩幅も乱れてる、そもそもふらついてて危なっかしい。あれでよく、外に出ようと思うよ……まったく)
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