泡沫のねがいごと野営中に引き受ける寝ずの番は、城の哨戒と違って少し気が緩む。守るべき命に差異があるわけでは決してなく、警戒に手を抜いているという話でも勿論ない。純粋に緊張が緩むのだ。私を受け入れてくれた騎士団が在るサントレザン城は愛おしい。けれどあの場所は、冷徹な父の瞳から逃れられない檻とも言える。広い空の下で過ごす夜は息苦しさがなくてよかった。屋根のある暖かな部屋よりも、だだっ広い野原にほうっと安堵を織り交ぜている時が最も落ち着くなどまったく笑える話である。結局のところ、忌み子には人の世の居場所などないのかもしれない。
「なぁ、花冠って知ってるか」
「……。警備中ではないのかね」
「これだけ静かなら大丈夫さ。万一何かが飛び出してきても、俺の雷より速い牙などない。そうだろう?」
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