「で、この地点に亡者どもを集めて連れて来て欲しいんだ。最悪、逃げ切りギャンブルにできる」
地図を指差す指は、無骨なただの男の指。節だってはなくてさらりとまっすぐ伸びている。球技をやってる指ではない。
意思の強いきれいな動き、その爪先を見る。
普通の平づめ、サバイバルの積み重ねで少し伸びた爪先が汚れている。
「やりますって簡単に言うけど、お前本当にその怪我で出来るのか」
こちらを射抜いてくる鋭い眼光。
真っ黒な瞳の中に赤い光が見える気がする。
声音にわずかににじむ心配は、成功の心配ではなく、本当に傷を心配してくれてるのだろう。
「おまじないって何だ?」
気がちょっと抜けた時の、この声が僕は好き。
淡々と聞こえて、感情が乗ると優しい、だけど翳りのある声。
肩にかけた手に髪先がぱらぱらとふれる。ハネる方向も、髪の細さも、長さも目に焼き付いている。
目を閉じたって、すべてが鮮明に思い出せる。さすが天才。
初めて触れる、暖かい唇の感触。はっと息をのんだのが伝わってくる。
暖かくて、ざらついていて、湿っていて。あぁ、言葉では表現しきれないこの記憶をどう心に留めればいいのだろう。
「そんなにふざけた元気があるなら大丈夫だ……なっ」
最後に僕を惹き付けてやまない見下す瞳。
相変わらず最高ですね、友一先輩。
ちゃんと、冗談っぽく笑えたかな。
「またな、京」
また会える。
でもきっと、またのまた、はないだろう。
またね、友一先輩。
僕は、このキス、一生忘れません。