「コラさんっ…」
(こいつ、なんで喧嘩してるのに俺で勃起できんだよ。性獣かよ。)
寝バックの体制で必死に腰を振るローに揺さぶられながら、俺はため息をつく。
船内ではちんこの挿入はあまりしないようにしているから久々の陸で事に及ぶ気満々のローに対して、俺はまったく乗り気じゃなかった。
今回の潜航はいつもより長かった為、普段ニコチン不足をごまかす為に嗜んでいた噛みタバコや梅干しがちょうどタイミング悪く全て切れてしまっていた。
我慢に我慢を重ねた俺は陸につく前からそわつき、上陸と同時にさっさと生活必需品を買いに行こうとしたところをローがイライラしたように呼び止める。俺がローを置いていこうとしたのが気に入らなかったらしい。
そこから口喧嘩になってだんだん話が大きくなり、「俺とタバコどっちが大切なんだ」とキレるローVS「セックスの優先度が高すぎる」とキレる俺。
売り言葉に買い言葉で「なら穴かしてやるから勝手に腰振れば?」と言ってしまい今に至る。
俺を求める姿はかわいいが、正直ちょっと、いやだいぶ気持ち悪いのではなかろうか。セックスに対して必死すぎる。おっさんの俺は年相応に性欲が落ち着いているのでちょっと引く。
そもそも、俺が若い頃だってこんなじゃなかったと思う。そりゃ溜まることもあるがドジって子供ができても困るから基本的にはさっくり抜いて終わりだったし、ローと付き合っている今のほうがよっぽど性的なことをしている。
使い込むとケツ穴って縦に割れて二度と戻らないらしいから皆気を付けてくれよな。俺のケツ穴は自分では見れないが絶対に縦に割れている。もうすぐ40になろうっておっさんのケツ穴がローに出会ってあっという間にがばがばにされちまった。怖すぎる。
俺はそんな状態だってのに、ローときたら「俺とタバコどっちが大切なんだ」なんてあまりにもちゃんちゃらおかしい質問である。少しは反省してほしい。
そんなこんなで俺は声も出さずむっつりと黙り込み、ラブドールに徹しているというわけだ。
ローは必死に腰を振っているが、実は俺は全然気持ちよくなかったりする。どう考えてもこの体格差でローのちんこが俺のいい所に届くわけがない。
そもそも普段気持ちいいのは、直接的な性器への刺激だったり、かわいいローが必死に俺を求めている姿や一生懸命体の表面を辿る指先やに快感を感じているのである。
この感覚をどう説明すればいいのかは自分でも分からないのだが、”脳で気持ちよくなっている”というか。つまり、心が伴わなければいくら穴を突かれたってちっとも気持ちよくない。
俺が無反応なのに不安になったのか、ローはちゅうちゅうと背中にキスをしながら必死に俺の名前を呼ぶ。いい気味だ。
「くらしゃ……ぐすっ」
「カーム解いて…」
カームなんてかけていない。ホントにこいつは分かってないなと思う。俺がどんなにお前の事を大事にしてるか。
「すき、すき…あいしてる…」
俺だってお前を愛してる。でもお前が俺の愛を疑うから、傷ついたんだ。
「ご…ごめん…ごめんなさい…」
「…。」
「はあ…。いったん抜け!」
体を起こしてローのほうを向く。
鼻水を垂らして泣くローはとても大海賊の頭には見えない情けない顔をしていて、せっかくのイケメンも台無しで。俺に無遠慮につっこんでるくせに、置いていかれた子供みたいな顔をしていて。
「お前さー…ほんとによぉ~~~…。」
たまらない気持ちになって力いっぱいローの頭を乱暴に撫でた。反省させたい気持ちとかわいがりたい気持ちが拮抗するが、勝敗なんて分かりきってる。
「ちゃんと謝れたから許す!…だから泣くなよろぉ…。」
慰めるようにキスの雨を顔面に降らせてやれば、ローは俺の首に腕を回して肩口に顔を埋める。裸の肌に感じるローの涙は温かくて、なんだか俺も泣けてきてしまった。