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    🟣文庫

    @azoa8a

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    友人に書いたもの記録する倉庫的な使い方をするはずです♪

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    🟣文庫

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    ⚠友人に書きました⚔hsb夢小説です。ご理解ある方のみお進みください!


    脳直ツラツラ捻出ですのでいつものことですが読みにくいです。

    匂いついに、ついに推し香水を手に入れた。



     長谷部への思いが募れば募るほど、ますます長谷部に近寄りがたくなる。向こうはこちらの気持ちに気づいているようで、ぐいぐいと近づいてくるがこちらの気持ちが持たない。
    やめてほしいと伝えても、長谷部はこちらの気持ちに確信を持っているのか、食い下がらなさそうだ。それでは困るのだ。距離をあちらから狭められると正直身が持たない。頭がパンクして、冷静ではいられない。


    そう、冷静に嗅げないのだ。長谷部の匂いが!


    同様に顔は緊張して勿論見れないし、基本視線は床とか自分のお腹とか、とりあえずとりとめのない場所を眺めている。しかしやはり一番気になるのは長谷部の匂いだろう。近くにいるときにしか味わえない最たるものの一つが匂いである。
    でもやっぱり長谷部の近くにいるときに平静を保つことは不可能なので、今回ついに推し香水を導入する運びとなった。これで私も長谷部の匂いを嗅げるのだろうか。




    ──





    「おや、香を炊きはじめたのかい。君も少しは雅やかな装いをしようという心持ちになったのかな。いいことだ」

     初期刀が通りすがりにそう褒めてくれてからは、次々と女たらしと呼ばれるだろう長船や少しの変化でも気づいてくれる短刀の子たちが次々とこの香りを褒めてくれた。
    当然悪い気はしない。

    「おはよー!主さん!あれっ!?主さんリンスでも変えた?かわいい匂いがする!!」
    「でしょ~!香水だよ!特別に作ってもらったんだ!」
    「特別!いいなー!特別な香りって言葉の響きからもうきゅんきゅんしちゃう!」 

    「内番の準備するぞー」と粟田口の部屋に回収された乱を見送ると、振り返ればひょろひょろとした男がすぐ後ろに立っていた。私を十分見下している高さから、さらに見下すような視線を受ける。

    「小夜の寝起き一発目の言葉が『くさい』でした。なんだなんだと本丸を歩き回る前にあなたの話が耳に入ってきましたよ、香水、確かに匂ってきますね」
    「え!?うそ、くさい?!付けすぎたかな……」
    「いえ、小夜の場合は人工的に思える匂いが苦手なのでしょう。それに慣れていないだけと思います。あなたがくれた消しゴムの匂いも最近は好きらしいですよ」

    確かに炭酸飲料の香りがする練りけしを先日あげたが、そうか、匂いが苦手かもしれないという観点が欠けていた。まあしかし、それも慣れて好んでくれたのなら万事オーケー、終わり良ければ総て良しだ。

    「そっか!匂いとかあまり気にしてなかったな……。小夜ちゃんに悪いことしちゃった、」
    「それで?なぜ匂いを気にしないそのあなたが香りなんてつけようと?まあどうせへし切絡みでしょうが」
    「ええ!?なんでわかった……?私の部屋に忍び込んだとかしたの?」
    さてはテレパシーか何かが使えるのかと疑い警戒するように見上げると、鼻で笑われる。
    「そんなことせずとも単純なあなたのことですからね」

    分かるでしょう普通、と呆れたように返されるとムムっとするがまあ私が片想いしてた時も最初にいびってきたのは宗三なので、今更と言えば今更なのかもしれない。

    「それにしてもあなたの脳内のへし切はずいぶんと穏やかなんですね」
    「え?なんで?」
    「それ、へし切の反応を見通して付けているんですか?ずいぶんと性悪になりましたね、僕と張り合う気でいるんですか?」
    「宗三と話してたら張り合う気なんて起きないでしょ、性悪なのかな…。全然考えてなかったや、長谷部のこと」
    「そう言うと思いました。まあ、そのうち当の本人も大好きなあなたのところにやってくるでしょう」
    はぁ、とため息をつきながらどいつもこいつも……とぼやいて廊下を切り返し左文字部屋へと戻る宗三を見ながら、それでも私は長谷部のしそうなリアクションを想像できていなかった。





    ──



     長谷部のことだしとりあえず褒めてくれるかな、と思い直しその日以降も欠かさず香水をつけていたが、ある時感じたのだ。
    長谷部と遭遇する頻度がいつもより少ない。
    私への対応もぐいぐい感は消え差し障りのないデフォルト長谷部である。距離も一定距離を保ってくれるし、前のように頭がパンクすることは無い。業務にも支障が出ず助かるかな、と思いながら過ごしていると、長谷部と反比例するように会う頻度の高まる宗三にまた声を掛けられた。

    「あなた、まだ気づかないんですか?」
    「なにが?」
    「はあ……へし切のことですよ、明らかにいつもとは違うでしょう」
    「そうかなぁ、ちょっと今日はお腹が痛かったとかじゃなくて?」
    「ならあいつはこれから毎日激痛の日々でしょうね」
    「そんなに長谷部機嫌悪かったっけ?」
    「そうですよ。あなたの前ではああですが跳ね返りは僕に来るんですからね」
    なんて言うんでしたっけ、営業スマイル?それですよ、と首元に手を置きながら面倒くさそうに説明してくれる。

    「まあそれも直にあいつの限界が来るでしょうし終わるでしょうね。あなたがどうなっても僕は知りませんよ」

    前から忠告してましたし、と告げられるとそのまま宗三はまた左文字の部屋へ帰っていった。
    それでもまだ、私は長谷部の心中は想像できなかった。




    ──




     事が起こったのはそれから何日後だっただろうか。



    「主!長谷部くんが中傷だって!!」
    「ええ?!!!」



    厨房からすっ飛んできた燭台切の荒げた声に、私も同じく声を荒げて返事をするしかなかった。もう十分練度のある彼が中傷というのは大分珍しく、本丸の各所からも驚きの声が聞こえる。さらに不思議なのは彼の練度では十分すぎるくらい駆け回れる戦場への出陣であるのに、中傷での帰還という点に引っかかる。

     とりあえず手入れ部屋へと走って向かい、すでに運ばれた長谷部が横に寝かされているであろう手入れ部屋の襖を開ける。



    「長谷部!」


    と叫んだつもりだったが、その声はくぐもり長谷部の胸元に消えていった。襖を開けた瞬間そのまま長谷部の腕の中に入れ込められたのだ。二の腕を掴む手はしっかり意志を持っており、がっしりすぎるほどに掴まれている。長谷部は包むように抱きしめているのか、屈んでいるおかげで髪が耳に掛かりこそばゆいし鼻息も掛かっているのが伝わる。

    「嗅いでください」
    「は、え」
    「いいから、吸ってください、ほら、息」
    「え、え!!」
    「肩も胸も動いていませんね、一緒に吸いましょうか? ほら、いきますよ。せーの、吸って、吐いて、」
    「あ、え……?」


    赤子に促すように真上から静かな声で「すぅー、はぁー、」と声が聞こえ、それに合わせて長谷部も息を吸っているようだった。呼吸に合わせた戦装束のわずかな動きが密着せざるを得ない自分の肩や腹に伝わる。
    何が起きているのか分からなかったが、次第に呼吸の声が耳元に近づいてきたので言われるがままに呼吸し始めるが、匂うのは中傷で帰ってきた長谷部の鉄の血の匂いと、砂埃、汗の匂い、そして少しだけ嗅ぎ慣れた匂いが鼻をかすめた。


    「これが俺の匂いです。分かりましたか?」
    「は、はい…」


    「では、主の匂いも」

    前髪がかかり顔はよく見えなかったが、そう言ってすぐに長谷部は私の首元に顔をやろうとした。さすがに怖くて「長谷部――!!!!!」と大声で叫ぶと、はっとしたようにきつく締められていた身体が解放された。
    何でこうされているのかが分からない、現に今も解放されたと言っても軽くは抱き留められている。もう何も頭が回らない。
    とりあえずその場をやり過ごそうとそのまま簡単な処置をして、すぐに手入れを開始させてその場をあとにした。




    ──




     土下座の長谷部が自室に現れたのは、その数時間後だった。土下座のあまりの綺麗さに惚れ惚れしてしまったが、長谷部の顔がバッとこちらに上がる。

    「先程は大変申し訳ありませんでした……。とんでもないことを俺は……」
    「いや、別にいいんだけどね…急でびっくりしたというか」

    私の困惑した表情を察したのか、長谷部が少し上目遣いをして口を開く。

    「その、最近つけている香水は、俺の匂いを想像したもの、なんですよね?」
    「それどこから聞いたの……?直接本人の口から言われると本当に恥ずかしいけど、そうだね」
    「誰に嗅がせるつもりなんですか」
    「へ?」
    「誰かに嗅いでもらいたいから香りをつけているんじゃないんですか、」

    「ん??違う違う!そういうために使う人もいるだろうけど、私はただ自分で楽しみたいからつけてただけだよ」
    「あ、え、つまり俺の匂いを纏いたいということですか?」

    ジャージの袖で顔を隠そうとしている長谷部だったが、全然見える。顔を赤らめた長谷部がこちらを覗く。


    「香りなら俺を嗅ぐじゃだめですか。いつでも嗅がせますし全力で匂いもうつしますから…!」

    またも綺麗な土下座が披露される。
    懇願されているのはとても伝わるが、匂いを嗅ぐ嗅がない云々でこんなにも土下座が出るとは思っておらず、少し笑いがこぼれてしまう。

    「ふふ、じゃあお言葉に甘えて匂いたいときは声かけるね。でもこの香水もいい匂いするしこれも使い続けようかな」

     


    一定の距離が置かれていたはずの長谷部が、ずずっと膝を立ててこちらに進んでくる。顔がやけに近い。澄んだ紫の瞳と目が合う。

    「なら、俺が常にそばにいれば使うことはないですよね?」



    その距離感の乱上下に困るから香水を買ったんだよとは言えず、そうだねよろしくね!と半ばやけくそに返事をした。
    がしかし、それ以降言葉通り長谷部が私から離れることは無く、宗三からは「あなた、へし切臭いですよ」と言われる始末になるのだった。
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