なんにも面白くない話 十四歳の砂宵はその日の放課後、中学校の図書室にいた。三か月前に学校一の美少女に告白され、付き合うことになってからというもの、そこで待ち合わせて帰るのが日課になっていたからだ。男子生徒たちから羨望と嫉妬の眼差しを向けられるのにはすっかり慣れた。
黒髪の綺麗な彼女とはまだ指先一つ触れ合っていない。それでも、目が合うたび嬉しそうに微笑む彼女のことをずっと大切にしたいと思っていた。居てくれるならばそれでよかった。それ以上なんて、考えていなかった。
十分ほど待っただろうか。遅れてきた彼女が机の上に荷物を置く。他には誰も居ない。彼女の名を呼ぶ。彼女は返答をせず歩み寄ってきて、砂宵の胸に顔をうずめた。ふわりと甘い香りが漂った。
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