LOOP ~失ったもの、残るもの~.
どうして、ここにいるのか分からなかった。
目が覚めた時、深い喪失感よりも先に空虚が襲った。
両手を見ると地面が透けて見える。
ああ、自分は死んだのだと悟った。
驚きは不思議と無かった。
ただ、体の中から自然と溢れるものが目から零れ落ちる。
守れなかった。
守れなかった。
あんなにも守りたいと思っていたものが。
深く強く。
これ以上無いほどに守りたいと思っていたのに。
それなのに、それが何かすら今の自分には分からなかった。
「・・・・・・えっと・・・・」
ぼんやりとしていた自分に躊躇いがちにかけられる声に驚いて顔を上げる。
そこには、あまり馴染みの無い服を着た男が立っていた。
短く切られたジャケット。胸元や使い古されたジーンズを飾る銀細工。
10308