シンちゃん×アスカさん電脳世界でキミと出会う
俺はシン。もちろん本物ではなくて、マスター(要はうp主ってやつだ)に本物を模して作られた(似てないけど)VRoid製のアバターだ。
やることといえばマスターのオーダーに合わせて服を着替えたりポーズを取って写真を撮ったり。マスターは機械オンチだからムービーは撮れないらしいけど、俺はそんなことどうでも良かった。
この世界、俺一人しかいない。ここにはオーブもプラントもない。守るべき世界がないんだ。
擬似的に形成されている俺のシン・アスカとしての記憶が、今の電子データでしかない自分には辛い。
俺は本当に暇だった。
久々にマスターに呼び出されて、何かと思えば自分と同じ顔をしたパーカー姿のアバターと引き合わされた。
「お前がシン?俺はアスカ。よろしくな!」
「え…ああ」
俺は少し驚いた。他人が同じ空間にいるのは初めてだし、同じ顔をしたアバターなのに俺より陽気な性格をしているようだ。
その日はマスターの要望でくっついたりいちゃついた感じの写真を撮らされた。仕事を選べない立場って辛い…。
マスターがパソコンをシャットダウンさせた後、俺はアスカと名乗るアバターと同じフォルダ内にいると気づいた。
マスターのいない時間は自由だ。ただ何もやることがないけど。
「シン~!遊ぼ~!」
アスカの声だ。俺と同じ声。でも陽気だ。
「…あんたは一人じゃいられないのか?」
「何だよ、暇なのはそっちも同じだろ?」
お互いのことについて話そうと言われ、俺は渋々アスカを招き入れた。
聞けば、俺と同一人物設定で、俺より数年年上らしい。容姿は全く変わらなく見えるが。
「ちなみに、シンは彼氏とかいた?」
「ぐっ!」
「いたんだ」
アスカはニヤニヤ笑う。
俺は作られた記憶の中にいるアスランに想いを馳せる。どんなに願ったって、電子データの俺には会いにいくすべがない。
「俺もいた。シンは知らない子だけど」
「そっすか…」
「マスターが作ってくれればいいのになあ。ホントやる気がないんだから…」
「2人目に作ったのが同一人物の俺だもんな。うちのマスター狂ってる」
ふと、他所のマスターを覗きにネットの波に乗ろうかと思ったが、多分今より虚しくなるだろうと思ってやめた。
「あーあ…暇だ…MS乗りたい…」
「マスターの力量とセンスじゃ無理だろ」
アスカはけらけら笑う。俺より年上って、どんな経験すればこんなあっけらかんとした俺になるんだ?
こんなディストピア、無くなっちまえばいいのに。俺のデータが消えたら、何も考えなくてもいいしスッキリするかな。
虚ろな目をして遠くを見ていると、アスカは俺にぎゅっと抱きついてきた。
「シンは気を張りすぎ。記憶に捕らわれるのはやめて、今ある自分を生きてみないか?」
「何で俺より後に産まれたあんたが、そんな悟った風なことを言うんだよ…」
「そりゃ年上設定だからな」
ふふんとアスカは鼻を鳴らす。
「今まで一人で寂しかっただろ?俺を頼っていいんだぞ?」
「別にいいです、あと離れて下さい」
つれないなあ、と言いながらアスカは身を離す。
電子データ同士のはずなのに、ぬくもりが離れていったみたいで少し寂しい。
「なあ、別のフォルダにある女の子の部屋いかないか?」
「何しに?」
「えっちしに」
よく聞こえなかった。よく聞こえなかった。
「何をどうするって…?」
「セックスしにいこう、俺はどっち側でもできるよ」
「ななな何言ってんだあんた!頭イカれてんのか!?」
「マスターがさあ、俺の性格色々弄ったみたいなんだよな。俺、わりと尻軽」
「信じらんねえっ…!」
「暇潰し暇潰し。それとも、怖い?」
「なっ…、怖くなんか!」
「じゃ、決まりだな」
フォルダを移動し、女の子の部屋のデータに入り込む。ファンシーな家具と、そう、ベッドがある。
「シンもこの部屋でいろんな写真撮らされたろ?」
「やめてくれ…思い出したくない…」
アスカはベッドに座って、横をぽんぽんと叩いた。隣に座れ、ということらしい。
俺は仕方なく促されたようにする。ベッドが二人分の重さに軋む。頼むからそんな無駄な演算をしないでくれ。
「ほら、おいで」
アスカは俺の首に手を回し、上目遣いで俺を見つめる。
自分と同じ顔でそんなことされても寒いだけなのに、何故だか急に人恋しくなった。
「ん…」
どちらからともなく唇を重ねる。口内の舌が絡まる。
ただのデータなのに、どうしてこんなに熱く感じるんだろう。
「ふふ…シン、顔が赤いよ?」
「うるさいな」
「じゃあこっちはどうかな?」
アスカは服の上から俺の乳首を刺激してきた。久々の(という設定になっている)感覚にぞくりと震えた。
「ちょっ…やめ…」
「俺のも弄れよ、独りだけ気持ちよくなる気か?」
「この、やろっ…」
俺は挑発に乗り、パーカーの中に手をいれてアスカの乳首をこねくり回した。
「シンっ…、気持ちいい…」
「淫乱が」
「はは、誉め言葉だな」
さらに刺激を与えてやると切ない喘ぎ声が漏れてきた。
「もっと、触って…」
「どうしようかな、やめちまおうか」
「意地悪ぅ…」
手を止めると、今度はアスカが俺のペニスをゆるゆると撫でる(そんなオブジェクトがあるのか、という野暮な疑問はなしだ)。
「う…!」
「あはっ、ちょっと撫でただけで固くなるとか、溜まってるな~」
「うるさい、あんただって勃ってるだろ」
「そりゃあこの世界じゃ何もないからな」
そう言うとアスカは俺の丸裸にされたペニスをちゅぱちゅぱしゃぶり始めた。やばい、気持ちがいい。
「んんっ…」
俺は声を押し殺して快楽を受け流そうとする。俺のものは完全に勃起していて、とろとろと先走りの液が出始めた。
「シン、抱く方と抱かれる方、どっちがいい?」
「あんたに抱かれるなんてまっぴらだ」
「それじゃ、楽しませてくれよ?」
アスカは下着ごとズボンを脱ぎ、四つん這いになって俺を誘った。
自分に誘われるなんておかしくて仕方ないけど、乾いた俺の心はそれでも熱を求めた。
「んっ…全部、入ったな」
穴を少し解しただけで、簡単に挿入できた。なんだかそういう特性を持たされたアスカに同情する。
「何だよ考え事かよ、動けよ」
「うるさいな…黙らせてやるよ…!」
俺は自身を抜き差しして、アスカを責める。こいつの穴、めちゃくちゃ気持がいい…油断したらすぐにでもイッてしまいそうだった。
「あっ、そこ、いいっ…!」
「くぅっ…!」
きゅうきゅう締め付けてくるそこを、粗っぽく犯す。気付けば夢中になって腰を振っていた。
「はあ…シン、イく…っ!」
「うあっ…!!」
アスカがいっそう俺を締め付けてくる、たまらず俺はその中に精をぶちまけた。
「電子データって後始末に困らないから便利だよな」
俺もアスカも裸になって、女の子の部屋のベッドに寝転んでいる。
あれからもう一戦交えて、大分しっくりくるようになった。
「シン、気持ちよかった?」
「わざわざ言わなきゃならないのかよ」
「つれないなあ…」
アスカはぷうと頬を膨らます。はっきり言って、こんなの俺じゃない。
マスターが性格を弄りすぎたんだ。俺がこんな風になる未来なんて怖すぎる。
でも、久々の人肌は心地よかった。
俺は寂しかったのかもしれない。
誰もいないこの世界で、何も出来ない自分を呪っていた。けれど、話し相手ができた。この世界も悪くはないと思える日まで、彼が隣にいてくれますように。
その日はいつもより深く眠れた気がした。