動きだす時間 怪我――とはいっても千鶴は鬼であることから傷口は全て塞がっている。だから後は長いこと眠りについてしまったことで引き起こされる弊害、身体の衰えだけだった。漸く体力が戻って来、料理を作れるまでには体力が回復した頃、千鶴は目が覚めて初めて共に過ごす八郎に初めて料理を作った時のことだった。
「勘を取り戻しながらなのでお口に合うかはわかりませんが…ど、どうぞ」
緊張した面持ちの千鶴に八郎は笑顔で応える。
「千鶴ちゃんが作ったものが口に合わないなんてことはありませんよ。君を僕の屋敷で預かっていた時もすごく美味しかったですし。…ふふ、楽しみだなあ。」
そう言って八郎は目をきらきらとまるで宝物でも見るような目で言うものだから千鶴は恐縮して顔を赤くさせてしまう。
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