「伸元くん、学校楽しいのね」
高等課程に上がって初めての夏休み、ダイムを連れて祖母の家を訪ねた。夏と言えど、外は雨で少し肌寒い。それでも夏だからと用意されたスイカは、食欲がなくなる暑い日に食べるのによさそうな甘さだった。学校はどう、と訊かれて答えたことについて、祖母は楽しいのね、と言った。おれは今の学校生活が楽しいのかどうか分からなくて、曖昧に微笑むくらいしかできない。そんなこともお見通しなのだろう、祖母はおれよりも楽しそうに笑って、
「お友達の話なんて、したことなかったじゃない」
と言った。
友達というのは、狡噛のことだった。春に出会って、まだ二ヶ月ほどしか経っていないのに、あいつはすっかりおれの生活に馴染んでしまった。聞き慣れた言葉が聞こえたからなのか、ラグの上で寝ていたダイムが、おれの脇まで歩いてくる。
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