宿儺のねえちゃん途中 一番記憶をさかのぼって、まっさきに思い出すものがある。
宿儺のよつの腕のうちのひとつと手を繋ぐ、幼い姉の横顔。五つも歳の離れた姉が、弟をふりかえって顔を綻ばせるときの睫毛の影。
姉の細い指が、いような風体の子供の頭をくしくしと撫でる。
そういうときに見上げると、決まって姉は微笑んだ。あねうえ、と、その頃はそう呼んでいた。
宿儺の姉は美しい女だった。
宿儺がそれを「あねうえ」と呼んでいた頃、姉とてまだ女とはいえない年頃だったが、それを引いても美しい娘であった。穏やかで、宿儺の分の善性を 母胎から根こそぎ持っていったのは この姉なのではないかという、そういう性根を持ち合わせていた。そのかわりに体の頑強さはすべて宿儺にくれていたと見えて、体は小さくて細かった。
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