生きていけないのはオレの方『オレがいないとオマエは生きていけない』なんて、オレは何を思い上がっていたのだろう――。
「あ……」
浴室から出るとドライヤーをかける音がした。見れば先に風呂に入ったマイキーが髪を乾かしている。当たり前の、当たり前じゃない光景。呆然とそれを眺めている内にドライヤーは切られて、マイキーはさらりとした短い黒髪を手櫛で整える。立ち尽くすオレに気付いて緩慢に振り向いた。
「何? ケンチン」
「や……別に……」
「あっそ」
そうしてマイキーはドライヤーを置き、とっととベッドに潜り込んでしまう。オレに背を向けてこのまま一人で寝る姿勢だ。
さっきくだらないことで喧嘩をしたのだ。きっかけは何だったかもう忘れたが、売り言葉に買い言葉で『オレが世話しなきゃ生きていけないくせに!』と口が滑って、そしたら『ケンチンなんかいなくったって生きていけるし!』と返されて今に至る。
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