スター・プレイヤー 学校の音楽室の片隅にチェス盤が置かれ、二人の少年がゲームをしていた。
盤面に向かう少年のうち、一人は中学生の枠を飛び越えるくらい強かった。もう一人、それより劣るもののやはり実力者である少年がいたが、この日はずっと勝負の行方の観戦に徹していた。盤面に向かう残りの一人が、この場所の新顔だった。
見物者の少年いわく、教室での休憩時間にクラスメイトとチェスの勝負をしており、勝利と共に小遣い程度の賭け金を回収していたところ、同じクラスの九井一がゲームに参加するようになったという。しかも「九井には四回の勝負うち、三回負けた」。
「レーティングがオレより二百上のオマエも勝率的に同じだろ?九井とどっちが強いのかと思ってさ」
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