見えなくても、「……ん」
唇が触れる。
ただそれだけのことなのに、こんなに毎回、新鮮に胸の奥が震えるのは。きっと俺の片想いが長すぎたからだろう。
「ふ、ぁ……ら、い」
「ん?どした」
「〜〜〜っ」
距離なんてほぼない、まさに目と鼻の先でライドウが呟く。吐息が当たってくすぐったい。
こんな関係になってから初めて聞いた声。小さな子に語りかけるようでもあり、でもそこに含まれた甘さは全く種類の異なるものだ。
「な、んでも……な、んぅ」
優しいけれど強引に、にゅる、と舌先を掬い取られる。
あつい。ライドウの口の中で溶けてしまいそう、と馬鹿みたいなことをぼんやり思う。
溶けて馴染んで、もう離れたくない。そうすれば、幻術にかけられてるんじゃないかって疑心暗鬼も一緒に溶けて無くなるかもしれない、なんて。
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