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    ninikoo0044

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    ninikoo0044

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    Webオンリーにて展示するもののサンプルですー!めっちゃ中途半端なとこで終わってますがご容赦ください。
    またカジノにいるのは作品の前半だけなのでちゃんとしたカジノパロじゃないかもしれません。
    サンプルは全年齢向けですが展示品はR規制つきます

    BLACKJACK (サンプル)───── 眠らない街、ラスベガス。

    嘘と欲が渦巻くこの街では今日も金が舞い、勝者が高らかに声を上げていた。
    この街の1番の産業と言えるであろうカジノには多くの人間が毎夜出入りしている。
    己の欲を満たそうとする者、人生の逆転を狙う者、一夜の夢を見ようとする者。様々な人がカジノへと足を踏み入れ勝者か敗者になり帰っていく。

    そんなラスベガスに多くあるカジノの1つ、「cestino」。その中で1人の男はディーラーをしていた。
    「やぁ。"ホークス"今日もよろしく頼むよ」
    いかにもないいスーツを身にまとった恰幅のいい男性が彼に声をかける。声をかけられたホークスという男は
    「こんばんは。今日も楽しんでいってくださいね」
    と微笑みかける。どこか幼さを感じさせるようなその笑顔にその場にいた他の客は彼のいる卓に次々と座った。
    しなやかな指先がカードをバラバラと揺らす。少し伏せられた目が色気を感じさせ皆は唾を飲んだ。その視線に気がついてかは分からないが唇を舐め少し湿らせ、ゲームの開始を高らかに宣言する。
    「プレイスユアベット。さぁ、賭けて?」
    彼の耳にはきらりと赤い宝石が光っていた。

    俺がこの場にいる理由、それは約半年前のことになる。
    マフィアがラスベガスのカジノを牛耳っていた時代は終わりを迎え始めまともな一般企業がラスベガスのカジノ産業に手を出せるようにまでなっていたこの頃、「cestino」というカジノの運営にマフィアが関わっているという情報がFBIに入ってきた。
    元々あまりいい噂は聞かないカジノだったがココ最近はそれがより酷くなっているらしい。
    あのカジノに行ったっきり帰ってこないものも多いらしく周辺の治安もどんどんと悪くなっていた。
    一気に取り締まれたらいいのだが、生憎警戒心だけは高いらしく尻尾を出さない。そんな時に考えられたのが「潜入作戦」である。
    その潜入作戦を実行する人間としてFBIの中でも特に見た目が良く、人とのコミュニケーションが上手い俺に白羽の矢がたつのは当然の事だった。
    「ホークス。本当に大丈夫か?」
    作戦が決まった当初、先輩であるジーニストさんが不安そうな顔で尋ねてきた。
    彼がそのような顔をする理由を俺は分かっていた。
    俺は日本で生まれた。しかし、家族は海外のマフィアと関わりを持った父のせいでボロボロになり、母はやつれ幼い自分に暴力を奮った。もうどうしようも無くなった時にたまたま日本に出張に来ていた現在の上司でもあるエンデヴァーに助けられた。
    そして彼の手を取るままにアメリカへと渡り今に至る。
    そのような過去の経験から俺はマフィア、という存在に一際嫌悪感を抱いている。
    その事をジーニストさんは知っている。だからこそそんなマフィアの巣窟に1人ほおり投げることを心配しているのだろう。
    「大丈夫ですよジーニストさん。俺もういくつだと思ってるんです?仕事と私情は混ぜませんよ」
    と、笑って返してやればジーニストさんは不安そうな顔は隠さぬまま「無理はしないように」と言い残し頭を撫で仕事へと戻った。
    彼とも長い付き合いだ。何も出来なかった子供時代を知っているからこそあのような心配と不安が湧き上がってしまうのだろう。
    その事に、不思議と嫌な感じはしなかった。
    彼に心配をあまりかけさせないためにもホークスは今回の仕事により一層力を入れた。

    ディーラーとしてカジノに潜入する際に支給されたピアス型の極小のカメラをいつも仕込み俺はこの4ヶ月間ディーラーとして潜入していた。
    怪しい部分はいくらでもあった。しかしまだ4ヶ月しか経っていないペーペーのディーラーなど重要な情報があるであろうフロアには行かせて貰えないのは当然だった。

    「これは結構長い任務になるな……」

    1人、潜入中に使っている部屋の中で酒を飲みながらため息をついたことは記憶に新しい。
    正直ディーラーという仕事はとても疲れる。ディーラーの仕事と並行して潜入捜査のために目を光らせる必要がある、というのも理由の一つだが一番の理由は彼を見る客の視線だ。人よりも幼なさを感じさせるこの顔は所謂「マニア」と言うやつにはとても受けがいいらしい。
    カジノ、ましてやマフィアの息がかかっている可能性のある場所でそんな「マニア」が居ない訳がなかった。
    隙あらば手を握ったり、臀を撫でたりしてくる耄碌じじぃ共の機嫌を損ねぬよう笑顔で躱すのは思ったよりも神経を使うのだ。
    それでも任務は任務である。神経をすり減らして愛想を振りまいてでもこの任務をやり遂げねばならなかった。
    毎日毎日出勤前少し憂鬱な気分になることくらいは許して欲しい。


    「ホークス」
    低く、心地のいい低音が人が少なくなった卓に響いた。パッと顔をあげれば黒髪に端正な顔立ちの男が立っている。
    「トーヤさん」
    笑顔で名前を呼びかければトーヤは笑って彼の前に座った。カラン、と彼の手にあるウィスキーの氷が揺れる。

    彼はトーヤ。このカジノの常連であり働き始めてからの付き合いが最も長い客である。
    彼との出会いはもちろんこのカジノ。俺が潜入を始めた最初の月のことだった。彼はふらりとカジノに訪れ俺の卓に座った。最初は彼の見た目に思わず息を飲んだ。顔のパーツ一つ一つが完璧でイケメン、というのはこのような人のことを言うのだと一瞬で分からされるようなそんな雰囲気を感じて見入ってしまう。
    青い目が俺をじっと見つめ思わず心臓がドキリと音を立てた。
    ウイスキーの氷をカランと揺らし彼は目の前に座った。
    「新入り?ゲーム付き合えよ」
    「あっ……と。最近入りましたホークスです。上手くできるかは分かりませんが……俺でよければ喜んで」
    そう返せば、慣れた風に彼は笑う。しかし彼は以外にもゲームが弱かった。まだ手の抜き方というのがイマイチ分かっていなかったためやらかした、と気がついた時にはもう遅く彼の軍資金が尽きる方が俺に勝つよりも早かった。
    しかしどのゲーム中も彼は楽しそうに微笑んでいた。最後も、失態を目の前に血の気の引いている俺を「ははっ!そんなに本気でやるやつがあるかよ。面白い。気に入ったよ、お前。」
    と人好きのする笑顔で笑って許してくれた。
    このカジノに訪れるものは皆金と欲に溺れた意地汚い人間が多い。そんな中で彼の笑顔はある種の余裕と懐の深さを伺わせた。

    そして気がついた。彼は「使える」と。

    彼の身なりをよく確認すればこのような一般客が入れるフロアではなくVIPのみが入れるフロアに余裕で入れる程度のものを多く身につけていた。
    もちろん見た目が全てでは無いが負けたにもかかわらずのこの余裕からもそれは容易に想像できた。
    なかなか俺のいるフロアに上客が来ることは無い。つまりそれは金を多く落とす客が少ないということだ。彼を上手いこと持ち上げ、勝たせ、負かす。そのサイクルで売上を伸ばしていく。もちろん機嫌を損ねないために多少のリップサービスは忘れずに。
    売り上げが伸びれば必然的にVIPのフロアへの異動が言い渡される。VIPフロアへの異動が今のところの第1目標だ。彼はその目標達成のためのいいカモである。
    実際彼はどの客よりも多くの軍資金をいつも持っていた。そしてウィスキーをもって俺の卓にブラックジャックをしに来る。何よりもいいことは彼が他のどの客よりも紳士的で俺に対して「嫌なこと」は何一つしてこなかった。まるで昔からの友のように気軽に話しかけ、酒で少しだけ赤く染った頬を緩めながらゆったりとゲームに興じる。その姿はさながら富豪の暇つぶしのようだった。
    「さ、今日もやるぞ。ブラックジャック」
    「ええもちろん。」
    他の人よりも数倍のチップを机に置き優雅に酒を嗜む彼ににっこりと笑顔を浮かべ今日はいくら巻き上げてやろうかなんて考えながら、カードを配った。

    「今日は惨敗だな。この前は勝てたのに」
    トーヤさんはまったく悔しくなさそうに笑いながらチップをこちらに渡す。
    「この前はトーヤさんついてましたからね。今回は俺の番ってことですよ。」
    俺の側のチップにまた新たな山が追加される。適度に負けてやっているつもりだが今夜は余程彼の運が悪いらしい。
    「そろそろか」
    無くなりそうなウィスキーのグラスをちらりと覗き見てトーヤさんは言うものだからあえて悲しそうに眉をひそめて首を傾げる
    「…俺はもう少しトーヤさんとこうしていたいです」
    このカジノでいつの間にか身についた媚の売り方だが存外これが彼にはよく効いた。
    するりと手を伸ばし俺の赤いピアスに触れて笑う。
    「可愛らしいお強請りだな。少し待ってろ」
    彼はそう言って空になったグラスをもってバーへ向かう。遠くなる背中を見ながらちょろいと思ってしまうのは仕方ないだろう。
    再びウィスキーを持って帰ってきた彼は
    「この1杯が終わるまで、それで今日は終いだ」
    と微笑むものだから顔を上げ笑顔で頷いてやるのも忘れてはいけない。



    トーヤさんを利用しつつ他の客からも金を巻き上げる生活を送って早半年、俺はオーナーの勅令によってVIPフロアへの異動が決まった。
    異例の速さではあったらしいが俺がたたき出した成績を鑑みれば当然の事との判断が下されたらしい。
    3日に1回の定期報告でその事をジーニストさんに伝えれば「流石だな」とお褒めの言葉をいただいた。
    これでさらに有益な情報が掴める。VIPフロアには普通であればお目にかかれないような重役達が多く出入りし、マフィアとの繋がりがあるものもいるとしたらこのフロアになる。
    VIPフロアのディーラー専用のタイを付けさらなる気合いを入れて仕事に望む。
    仕事自体はあまり変わらなかったが何よりもの違いは掛け金の大きさだ。一般人が一生かかっても稼ぐことの出来ないような額が平気で溶けるこのフロアに本能的な嫌悪感と不快感を抱く。
    しかしそんなことをいちいち気にしていては本当の目的など達成されない。世の中の絶対的な理不尽に目を瞑り俺は目の前の任務に集中した。

    VIPフロアでは一般フロアよりも頭のおかしい客も多かった。中でも特にやばかったのが「私が勝負に勝ったら君の1晩をくれ」と言ってきた輩だ。もちろんその変わり相手が負けたら異常なほどに高い掛け金が自分の売上に変わる。さほど金にはもう興味がないため断ろうとしたが思った以上に周りの客が盛り上がっていく。ここで断れば客は興ざめ、ディーラー失格の烙印を押されてしまうことは明らかだった。顔が引き攣りそうになるのを必死の笑顔で隠し、俺は泣く泣く勝負をすることになった。
    もちろん勝負は俺の圧勝。そう簡単に1晩などくれてやるものかと本気でやれば相手の男はプルプルと震えていた。
    そしてどこから出したのか大金を机に広げ
    「それと加えてこの金も出そう!だから、ワシと1晩!」
    と俺の手を必死で握り懇願される。
    はぁっとため息を吐き
    「お客様。賭けの勝者は私です。ルールには従っていただかないと……」
    と言っても引かない彼に若干のイラつきを隠しながらどう対応しようか迷っていれば
    「おいおい爺さん。ここがどこか忘れたのか?ここはカジノだ。カジノにおいて賭けは絶対であり唯一破っちゃいけねぇルール。そんなことも分からなくなったか?」
    カラン、氷を鳴らす音とともに現れたのは俺がVIPフロアに異動してから数ヶ月間会っていなかったトーヤさんだった。
    「だ、誰だお前は!」
    「うるせぇな。俺もそこ狙ってんだ。早くどけよジジイ」
    トーヤさんのどこまでも冷たいその声と共に周りにいた客たちも次々と男に罵声を浴びせ始める。
    「そうだ!お前は賭けに負けたろ!敗者はすっこんでろ!」
    「いつまで経っても見苦しい……早く消えてくれないかしら。」
    そんな怒号が飛び交う中で男は耐えきれなくなったのか顔を真っ赤にしてその場を立ち去った。俺は喧騒の中で優雅に座っている彼に声をかけた
    「トーヤさん!お久しぶりです。あと、ありがとうございます」
    「久しぶりだな。ホークス。ぽっかりお前が居なくなっちまったからどうしたか他の奴らに聞いてみればこっちにいるって聞いて驚いた」
    カラカラとグラスを揺らし先程とは打って変わって柔らかな口調で話す。
    こちらにいる、と聞いただけでVIPフロアに通されてしまうのだからやはり彼も一般人でないことは明らかだった。
    「さ、この間の続きをしようぜ。もちろん、ブラックジャックで」
    「ええ。俺でよければいくらでも」
    コトン、とウィスキーのグラスを彼が置いたのを合図にしばらくぶりの彼とのゲームがスタートした。


    そこから更に半年後、俺は未だ決定的な証拠を掴めずにいた。VIPフロアでの話やスタッフ専用ルームで見れる資料を漁っても恐らく、と推測のできるような資料しか置いていない。一般フロアにいた頃よりは余程ましな状況だがこれではまだ規制に踏み切るには早く最悪誤魔化し切られてしまう。ヘマをするようなことはしないがこの半年で少し動きすぎたためより慎重に作業を進める必要がある。しかしそんなことを言っていてはいつまで経ってもこの任務が終わらず周辺の治安維持がより難しくなるのも当然だった。
    一刻も早くこの状況を打破しなければ、そんな焦燥をずっと抱えていた。

    「疲れてんのか?」
    いつも通りカランと氷を揺らし目の前にトーヤさんが腰掛けた。彼が近寄ってくることにまったく気が付いていなかったため多少驚いたが直ぐに笑顔を作り直す。
    「バレちゃいました?やっぱりVIPフロアは緊張しますからね」
    トーヤさんが来たことに合わせてルーレットをしまい、トランプを取り出す。VIPフロアに来てからルーレットの方で楽しむ客が多くなりいつの間にか俺の卓でトランプをやっていくのはトーヤさんただ1人になっていた。もはや彼専用と化しているトランプをいつも通り混ぜていく。
    「そうか。俺ァてっきり」
    突然、トーヤさんは立ち上がりトランプを持つ俺の手を握った。
    今まで彼からはまったく触れられなかった手を握られ、驚いて声を出せず硬直する。そんな俺をよそにトーヤさんはテーブル越しにゆっくりと顔を近づけ俺の耳を柔く噛んだ。
    これ以上は流石のこの人でも許せない、そう判断し突き放そうとした瞬間。

    「お仕事が忙しいんじゃないかと思ってたよ。"鷹見啓悟くん"」

    ドロドロと溶ける蜂蜜のような甘い声がうるさいカジノの中でやけに鮮明に聞こえ、ゾワゾワと全身の毛が逆だっていく感覚がする。
    なぜ捨てたはずの己の名を彼が知っているのか、自分がFBIであるということもバレているのか。思考が一瞬にして高速回転し始めこの場における最適解を見つけ出そうともがいている。
    そんな俺を嘲るかのように鼻で笑った男は俺の手をぐいと引いた。
    「お前が知りたいと思ってること、全部教えてやる。個室、来るよな?」
    このVIPフロアには喧騒から逃れてゆったりとゲームをしたい人用に個室が設けられている。もちろん個室を使えるのはVIP中のVIPのみに限定されるが。
    ギリ、と唇をかみしめて目の前の男の提案にゆっくりと頷けば彼はニヤリと今までに見た事ないくらいの歪んだ顔で笑った。

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