坊とフリックの少し未来のじゃれあいメモ お前が順当に歳を重ねていってくれていることが、おれは何より嬉しいんだ、って、そろそろ無理がきかなくなってきたとぼやく元副リーダーに有り体に伝える坊とフリックの小ネタ
「傍目には下手すりゃ爺さんと孫に見えるかもな」
「馬鹿いえお前にそんな貫禄なんてあるものか、親子にだって見えやしない」
……だからせいぜい長生きしろ、おれの爺さんと間違われるくらい、ちゃんと元気で生きていてくれ。
言外の意は、こいつなら汲み取っているだろう。
それにしても、あの頃の父の年齢なんてとうに越えているにも関わらず、こいつは威厳なんてかけらも見せない相変わらずの優男だ。やさしげな見た目に反して本質はかなり自他に厳しいやつだが、今一歩のところでどうにも詰めが甘い。
……主に身内に対するその甘さに付け込んでいる自覚はある。
置いて、行くのか。置いて逝かれるのか。
年の単位での時折の訪いごとに、少しずつ老いを重ねる奴は、わかっていてこちらを甘やかす。あの頃と同じように、おれをおれとして、ともに隣に立った戦友としてみなして、相応の雑さで接してくる。
変わらぬ姿のこちらに何も感じないようなやつじゃない。
一度、酒の勢いか何かで聞いてみたことがある。
「ああ、そりゃあ、」
瞬間和らげた表情を、あいつはすぐにちょっとばかり人の良くない笑みに置き換えて鼻を鳴らしてみせた。
「見た目はともかく、中身は相応以上に老獪になってやがるもんな、リーダーさんは」
ガキ扱いなんてとてもとても、等とおどけてみせるからタチが悪い。そこに乗っかってじゃれあっているのだから、こちらも随分甘ったれてはいるのだろう。
「お前こそ、長生きしてくれよ、リーダー。不老といっても不死じゃあない。死ぬなよ?」
次の約束のない、それはいつものやつの別れの言葉。
勿論だ、と笑ってやる。
その言葉が、その声が。どんなに過去のものとなろうとも。
それはきっと、おれが生きる理由の一つになる。