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    きいろい

    @kkkjaiindia

    ラビチャタのひと。
    エアスケブリクエストありがとうございます!
    でもエアスケブよくわからないので、
    波箱にくださるとうれしいです😂
    お気軽にどうぞ🙌
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    きいろい

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    未満ですが、ラ×ビなShipperが書いています。

    宝の日々のうちのどこか。
    兄貴から見たアクタルと、使命を全うするという決意と、寝ぼけた弟分。
    わたしなりの解釈です。

    #ラマビム
    ramabim

    兄貴の気づかないふりと限界。 今日も人相書きを持って一日中デリーを駆け回った。
     上官へ代わり映えのしない進捗報告を済ませて自宅に戻ると、可愛がっている弟分が床に転がっていた。わたしが散らかした本の隙間にむりやり収まった白いクルタの胸がゆるやかに上下している。床に広げた本の山をなんとかせねばと思ってはいるのだが、しょせんここはお尋ね者を捕らえるまでの仮住まい。すぐに開きたい資料でもあるし、休日はアクタルと外にでてしまうので、言い訳が重なってなかなか片づけられずにいた。
     アクタルと出会ってから、三日と開けずに顔を合わせている。こうして彼がこの部屋を訪れることもあるし、わたしが工場(こうば)を訪ねることもあった。彼のバイクでデリーを駆け回ることも、隣町まで彼と並走しながら馬を駆ることもある。
     出会ってまだ数か月だと言うのに、彼と出会う前に休日をどう過ごしていたか思い出せない。ただひたすら、村の期待に応えることだけを考えていた気がする。
     もちろんアクタルと出会ってからも、使命を忘れた日は一日たりともない。むしろ、彼のおかげでより決意が固まったと言える。

     アクタルは英語を話さない。穏やかなムスリムの彼は、インド人にも英国人にもウルドゥー語を使う。彼の家族もそうだ。あの工場で英語を話すインド人を見たことがない。
     もちろんそれは悪いことではないのだが、それが横柄な英国人の餌食になりやすいのも事実だ。言葉がわからず苛つくのか、それとも告げ口をされない、言い返されないという愚かな優越感からか、英語を話さない民草は白い悪意を向けられやすい。
     昨日も英国人兵士の顧客に無茶を言われているのを見かけた。優しくて穏やかなわたしの弟分は、眉を下げて控えめに首を振り、文句も言わずに黙って横暴に耐えていた。厚みのある身体を小さく丸めて頭を垂れる姿に胸が苦しくなる。しきりに両の二の腕をさすって、落ち着かないようだった。
     彼は少し臆病なところがある。見ず知らずの少年を救うために迷いなく命を懸けられるのに、わたしも敵わない剛腕であるのに、権力や暴力には滅法弱い。根が優しいのだろう。

     アクタル、わたしの弟。ぐりぐりの巻き毛に、ふっくらと膨らんだ頬、丸い大きな目。ころころとよく変わる表情に身振り手振りを交えて全身を使って語り、まん丸の目をとろりと半月にして笑う。澄んだ目でこちらを覗き込んでくる様は純真そのもので、心の底まで見透かされそうで、隠し事をしていることがすこし心苦しく感じることもあった。
     口いっぱいにものを頬張る姿は記憶の中の実弟とぴたりと重なり、切なささえ覚える。あの子も生きていたら、アクタルのように強く優しい子に育っただろう。食いしん坊もそのままに。
     まさかこの歳になって、血を分けた兄弟のように分かり合える愛しい存在に出会えるなんて。祈る対象に違いはあれど、彼は間違いなくわたしの魂の片割れだ。使命を背負ったわたしに、守るべき存在を与えてくださった。村の期待と、父の言葉と、圧制者への恨みだけを糧にこれまで生きてきた。
     でも、きっとわたしの成すことはアクタルのような善良な市民をも救うはず。それは大きな希望になった。
     苦節四年、やっと昇進が現実味を帯びてきた。人相書きの男を探し出して、部族の羊飼いを捕らえる。絶対に。

     急に目の前の存在が堪らなく愛しく思えて、とびきり甘やかしてやりたくなる。疲れているのだろうからこのまま寝かせてやりたいが、本を避けた体勢のまま床に寝ていてはどこかを悪くしてしまいそうだ。せめてベッドに移動させよう。

    「アクタル、」

     軽く肩に触れようと手を伸ばしたその瞬間、右腕を掴まれていた。部屋の空気ががらりと変わった。驚いて引こうにも、寝起きとは思えないほどの力で握りこまれる。身動きが取れない。
     動けば、やられる。

    「あ、あくた、」

     空気を裂くように鋭い視線が、部屋の中をすばやく一瞥した。ギラギラと獰猛な光を湛えた両目がようやくわたしを捉え、ふいに力が抜けるようにふにゃりとほほ笑んだ。甘えた弟の雰囲気が帰ってくる。

    「なんだよ兄貴、急に触れるから驚くだろう」
    「ああ、悪い……」

     わたしの手を解放したアクタルは、凝り固まった首をほぐすように伸びをする。そんなところで寝るからだと言って笑うべきだったが、できなかった。先ほどの衝撃をまだ自分の中で捌けずにいる。
     油断していたとはいえ動きがまったく見えなかった。予備動作もなしに突然掴まれた。まるでしなやかな野生の動物のように。
     しかも、アクタルは触れられて起きたと言うが、あのときわたしはまだ触れていなかった。

    「アクタル、寝るならベッドを使え、身体を傷めるぞ」
    「ん~、いや、もう目が覚めた。それに、俺は兄貴を待ってただけだから」

     そういって甘えた弟の顔を向けてくるアクタルは、いつもと変わらずかわいい。先ほどの凶猛な目がうそのようだ。
     あの目。いつもは好奇心にきらめいて、時に甘くとろけるチョコレート色が黒く光って烈しい感情を放つのを見た。眉の下からこちらを睨むように眇めた、目。心の底まで暴かれるようだった。あの目を思い出すだけで腹の奥がぞわぞわして落ち着かない。身体の芯から揺さぶられたような錯覚を覚える。

     アクタル、きみは一体何者なんだ? 
     人当たりのいい明るく朗らかな身の内に、どんな獣を飼っているんだ?
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