祭りのあとに バンカラ中を巻き込んで やれ辛いものだ!甘いものだ!いいや、酸っぱいものだ!!! なんて、 騒いで歌って戦った3日間。
夜通し 踊って 体もギシギシ痛むし、散々歌うために酷使した喉は 声がひしゃげて潰れて、たまに ひゅ、と乾いた呼吸を零してしまうし。 ようやっとスタジオ内の座布団に座り込んだ時、 そこから根を張って動けなくなってしまいそうな 錯覚に陥ったし 。 ( 現に今、立ってくださいって言われたらウチはきっと立てへん。 )
そこから30分ほど 3人でぽつぽつうだうだ、 飲み物を飲んだり 軽めの雑談を交わしてみたり 。 祭りの結果が出るまでは、暇なのだ
。 疲れているから喋る元気もないんだけど、 なにぶん 、祭りの前に仮眠を取ったとはいえ、ほとんど3徹目だし、喋っていないと今すぐに瞼どうしがくっついて死んだように眠ってしまうだろうし、 そうなったら 結果発表どころじゃない。 だから、さんにんで 中身のない話をぽつぽつと 続けていた。
「辛い派勝ったら激辛グルメ巡りしてもらうで…。ひと口食べただけで舌痺れて汗も止まんなくなって、口から火ィ吹くぐらいのカレー屋連れてったるわ…。 」
しっかりと想像したウツホが うげえ〜。と舌を出しながら唸った。
食べず嫌いをしないこのコでさえも ウチがよく食べてるスナック菓子も、 好む味付けの食品も。ひとくち口に含んで あからさまに辛そうに顔を顰めながら熱くなった舌を冷まそうとして 舌を突き出してヒィヒィ悲鳴をあげているのを、割と高い頻度で見る。 やめな、とは止めるものの よゆーじゃ !と タカくくって 食べて、 ヒイーッ!って甲高い悲鳴をあげるまでがワンセット。 、見てるこっちは 愉快でしょうがないんだけれど、本人は 瞳に涙を浮かべながら水を求めている可哀想な状況になっているし、 楽しくなる要素はない、んだけど…。
「それじゃ〜…ワシは甘いもん食い放題の店に行きたいのう……、全部が全部あまあまで幸せになる店じゃあ……。」
「うわぁ〜、嫌やあ〜、ぜーんぶ甘いのなんて胃がムカムカしてまうわ…マンタローは?どこ行きたい?」
「エイ〜…エイッ…( 僕はまず家に帰って寝たいな〜…、それで起きたら疲労回復のために梅干しをいっぱい食べるんだ 〜 )」
寝る。 そんな単語を聞いた瞬間、 かすみががった頭が重たくなって、反射で目を閉じそうになってしまった。 隣のウツホはもう、完全に目を閉じていたからむき出しの横っ腹を指でつつく。 間抜けな声を上げて バターン!と 倒れ込んでから 不服そうな顔で起き上がってきた。 そのまま目を閉じなかったのはえらい。 えらかった、よう耐えた。
「あ〜…やめやめ、マンタロー…寝るって単語はやめ…」
「エ〜イ〜(理不尽〜、だけど…ごめんね〜…)」
「2人とも〜、シャキッとせえ〜、仕事じゃ仕事じゃ。」
「あんたが言いな…。んじゃ、始めんで。」
聞きなれたジングルのあと、喋り慣れた常套句。 祭りの結果が出たと 、 マンタローが抱えるモニターに 目を移して…。
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「食べ放題じゃ〜!!」
ケーキにフォークを突き立てるウツホの姿に、思わず 頭を抱えた。 どこもかしこも、はてまではお茶まで甘いその空間。 見てるだけで胃もたれする。
甘いものが食べれないわけでは無いが、 辛いものの方を好んでいるからか 嫌にしかめっ面になってしまう。 それでも隣でキューインキのように ケーキやらシュークリームやら頬張るウツホを見ていると、心のはじっこがふわふわ暖かくなるような感覚になる 。 スイーツをぱくぱく食べるウツホから視線を外して、先程から黙りこくってるマンタローに話を振ろうかと考えたが、頼んだパフェをどう攻略して食べようかを真剣に考えていたから、渋々頼んだカレーに手をつけた。
辛くない 。甘口も甘口。 イカのこどもでもニッコニコで食べられようなやさしい味付けに物足りなさを感じながら 食べ進めていく。カレーの濃い味なのにあと引く辛さがないのも新鮮、と言うか、ほんとに 物足りない!
「ふたりとも、胃に余裕空けときや。」
カレーをつつきながらウチが声を掛けると 口元にクリームをつけたウツホと 、 ようやくパフェのアイス部分にスプーンを突き刺したマンタローが不思議そうに視線を向けてきた。
「エイ…?( どうして? )」
「こんだけ甘いもん食べてたら食べたくなるやろ?しょっぱいもん。余裕もってラーメン食べに繰り出すで! 」
ごくん。 ウツホが皿に乗ってるケーキを嚥下して、 ニッコリ わらって快諾した。 そのまま寝不足で少しふらつく足取りのまま立ち上がって…ウチらに向かって親指を立てた。
「じゃあワシ、ショートケーキとチーズケーキとチョコケーキ、あとはフルーツタルト!持ってくる!」
「え、話聞いてた!?」
バイキング列に駆けていくちいさい背中に声を掛けると、 そのきいろから あきらかにテンションがおかしくなってきている笑いが聞こえた。
あかん、しょっぱいものの前に寝な … 。