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    柚希🪼

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    柚希🪼

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    NEGIあん小説途中

    「あんず、ちゃんと休んでる?」

    放課後、舞鶴荘で作業しているあんずの元にやってきたのはプロデュース科の元後輩、黒根ひつぎ。ではなく今はNEGIちゃんの方らしい。

    「なにもここに来てまで仕事することないでしょ…。」

    あんずは月に何度かこうして舞鶴荘に訪れてはひつぎやNEGIと談笑を楽しんだり、子供たちと触れ合ったりと穏やかな時間を過ごしている。あんずはこの時間が大好きだった。しかし仕事人間のあんずは手が空くと直ぐに持ち帰ってきてらしいプロデュースの仕事に手をつけてしまう。

    「なにかしていないと落ち着かなくて。」

    あんずは苦笑いと共に答える。

    「まぁあんずらしいけどさ。今やってるのは何?」

    「これはコラボ案件の整理。声をかけてもらえるのは嬉しいことだけど最近多くて追いつかないんだよね。」

    「忙しくしてるんだね、皆。」

    「うん。嬉しいよね。」

    あんずはキラキラした目で嬉しそうにタブレットを眺めている。仕事人間のあんずといえどこれは単に仕事に対してだけ喜びではないことにNEGIは気づいていた。プロデュースの仕事を通して得るアイドルたちのキラキラの笑顔があんずには見えているのだろう。

    NEGIはアイドルたちの裏側をよくは知らない。でもあんずをみていると、きっとあんずにプロデュースされているアイドルたちはステージ以外でもキラキラ輝き、たくさんの笑顔を届けているのだろう。全部があんずのおかげだなんて言わないが、「あんずだから」キラキラ輝いているアイドルがいることをNEGIは知っている。それほど魅力に満ち溢れた子なのだ、あんずは。

    「あっ。」

    突然あんずが声を上げる。なにか問題でも見つけたのだろうか。

    「どうしたの?あんず。」

    NEGIが声をかけると、トラブルか何かだろうかというNEGIの予想とは裏腹に、あんずは満面の笑みでNEGIにタブレットを見せてきた。

    「これ、NEGIちゃんやらない?」

    「……仮面舞踏会?」

    あんずから見せられたタブレットには煌びやかな装飾の中に「仮面舞踏会」の文字。時代に合わないその文字はテレビによる華やかな時代の真似事かと思われたがどうやらそうでは無いらしい。主催の財閥グループはその方面に知識のないNEGIでさえ聞いたことのある名前であった。もちろん、天祥院財閥には劣るだろうが。

    「なるほど。お金持ちの遊びってわけね。」

    「そうとも言う。」

    そこで、さっきあんずに投げかけられた言葉を思い出した。

    「これをやるってどういう意味?」

    「そのままの意味。出てみない?」

    あんずはつくづくNEGIの想像を遥かに超える提案をしてくる。脅威は消えたとはいえなるべく身を隠さなくては行けない身の私に表舞台を勧めてくるあんずの目に、冗談の色は見えない。確かにNEGIは、いずれ表舞台に戻ることを望んでいるが時期尚早ではないか。

    「私の状況。」

    「仮面舞踏会だよ?」

    「だとしても。」

    「そっか〜、残念。」

    あんずは残念と口に出しつつもあまり落ち込んだ様子はない。きっとNEGIからの返事は大して期待していなかったのだろう。それもそうだ、NEGIの状況を今1番わかっているのはあんずなのだから。

    「分かってたでしょ。……なんで?」

    「んーーー、見てみたかったから。」

    「仮面舞踏会を?」

    「んーん。ドレス着てるNEGIちゃん。」

    とんだ口説き文句だとNEGIは思った。NEGIは弟であるひつぎの体を借りている身であるため、いわゆる女の子らしい服装はこの状態になってから着る機会が減った。生きてきた頃はそれなりにファッションに興味もあったし可愛らしい服装もしていたが、それどころではなくなってから今まで着たそれらしい服と言えば、制服か、あんずが作ってくれたアイドル衣装くらいなものだ。ドレスが着たくないわけじゃない。ただそうするわけにはいかない事情があるだけだ。

    「悪いね。」

    「……着ようよ、ドレス。」

    「だからごめんって。」

    「2人だけの仮面舞踏会、どう?」

    あんずの予想外の言葉に思わず笑いが込み上げてくる。どこまでも予想外なのだ、この子は。本当に面白い子。

    「ドレスは?」

    「もちろん作る。」

    「ふふっ。作らなくても、用意してくれるだけでいいのに。」

    「やだよ。私以外が作った衣装着てるNEGIちゃん。」

    「独占欲?」

    「当たり前。」

    2人は笑い合う。いつもの日々にちょっとのスパイスをくれるお互いの存在はいつしか特別になっていた。

    「知ってる?服を送る意味。」

    「言うようになったじゃん。」
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