【カム隼】その人の匂いすん、と鼻を鳴らす。
澄んだようなどこか曇ったような、この人の……隼人の、独特の匂いだ。
どこか好ましいそれについて、本人に直接言ったことがあるが「そうか、俺ももうそんな年か」と、自嘲気味な笑みを零していた。
(俺は何か、悪いことを言ったのだろうか)
カムイには、隼人の微笑の意味がわからない。
どういうことなのだろうと伊賀利に聞いてみたことがあるが。
「あー、それな。それは言っちゃあいけねぇな。俺とかはいいけどよ。ドクターには絶対言うなよ」と念押しされただけで、さっぱり意味がわからなかった。
最近機会が減っていたが、隼人は一緒に夕食を食べたあとにコーヒーを淹れてくれる。
その時間だけは隣に居て良いので、ソファに並んで座り、味の良しあしなど特にわからないその液体を少しずつ啜る。
1229