寝落ち部屋から出るとルミリオンが落ちてた。
正確に言うと、リビングのソファ一歩手前でコートも脱がず、うつ伏せのまま寝ていた。室内とは言え暖房もなにもつけていない部屋なので肌寒いわけで、風邪をひかれでもしたら大変だ。自分が。
「おい、起きろ風邪ひくぞ」
前に一度同じようなことがあり、しゃがむのも面倒で蹴り起こそうとした所、僅かにあった敵意に反応したのか、カウンターをくらっているので今回は二度と同じ目に遭わないよう治崎はしゃがんで通形の肩を揺すり声をかける。
いつからここで寝ていたのか触れたコートは冷たい。何度か揺すってみてもよほど疲れているのか眠りが深いのか起きる気配がない。
治崎は面倒になってコートを脱がせ、ベルトを緩めて楽にさせる。しゃがんでいた体勢から立ち上がった。自身の部屋には予備の毛布はないので通形の部屋へ入り目的のものを探す。
あまり他人の部屋には長居したくない。汚い。さっさと毛布をつかんで部屋を出て、リビングに戻ると通形はコートを脱がせたことで身体が冷えて目が覚めたのだろう、うつ伏せから仰向けになり寝転んだままぼんやりと瞬きをしていた。
「…ぅ………んぁ……………ねてた………………」
「寝てたよ。まだここで寝るか?」
「……ぁや、うーーん゙ん」
しばらく独り言を発していた通形がこちらに手を伸ばしてきた。この期に及んでまだ甘えてくるのかこの男は。
「おねがい」
「馬鹿か。お前帰ってきてから着替えてもないし、手も洗ってないだろ」
「さむいーちさき、」
手を軽く揺らしながら通形は尚も食い下がる。
「明日、魚にするから」
「……だったら部屋に戻ってちゃんと布団で寝ろ」
治崎は通形の手首を掴んで自分の方に引っ張り座らせる。
「ふふ、ありがと」
立ち上がって伸びをしながら通形は自室へと歩き始めた。のんきなやつめ。
何のために部屋を出たんだっけか、大した用では無かっただろうそのうち思い出すはずだ。水でも飲んでから寝直そう。
しばらくキッチンでぼんやりした後、部屋へ入る直前に隣から「あ!」と聞こえてきたと思ったらそのまま静かになった。その声で用事を思い出した。自室へと続く扉を一度閉め、隣の部屋の扉を開く。
「おやすみ」
「……?!お、おやすみなさいっ」
さて、もう寝てしまおう。