はくしゅ 音もなくスプーンの上に重なっていくそれは透き通った紫色をしていた。砂粒より大きくて小石よりは小さい。それでいて角が鋭い。まるで紫水晶を砕いたみたいだった。
「なんだ、それは」
ヒュースはスプーンを持つ烏丸に聞く。
「これは食べると天使の祝福が聞こえる飴だ」
天使という言葉の意味がわからないし、祝福が聞こえるというのもよくわからない。理解できたのは、この紫水晶に似たものが飴であるということだけだった。
ヒュースはその飴をじっと見る。ちょうど窓から光が射し込んで、紫色がきらめいた。こんなに美しい食べ物があるのかと感心してしまう。
「食べるか?」
烏丸にそう聞かれたのでヒュースは頷いて口を開けた。口内にスプーンが侵入してくる。冷たい金属が舌に触れ、たちまちぬるくなった。さらりと舌の上に降ってくる細かな飴はすぐに溶けるのだろうか。
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