ジリジリと茹だるような夏の暑さも都心を離れてみるカラッと爽やかで、寧ろ爽快とすら思える。抜けるような青空、全身に感じる風が心地いい。派手な赤色のオープンカーはこんな快晴の日こそ本領発揮を発揮する。
車の外は木々が生い茂っていて、林のようになっていた。その間を突き抜ける一本道を、オープンカーは走っている。中古の車には酷な道なのか時折ガタンと車体が大きく揺れたが、特に気にはならなかった。
隣に座る運転手は不機嫌そうに終始顔を顰めながら、ゲストに合わせて選んでいるというラブソングをこれ見よがしに流していた。
「全く…なんで俺がこんなこと」
「頼めるのは芹澤しかいないんだよ。どうせ暇だったんだろ」
「暇じゃねぇよ!教師舐めんな。お前も分かるだろ、同業者」
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