春がくる/ジュン要冬を超えて生暖かくなった春の気配を感じながら、通い慣れた病院への道を行く。
昨日は玲明学園の卒業式だった。寮に戻ったりESに報告しに行くと、ユニットメンバーや他のアイドルからたくさん祝いの言葉をもらった。
特待生としての卒業。それを思う度、やってやったという気持ちと、これから会う人への負い目を同時に感じる。
おめでとうの言葉を言われるのもむず痒い。いっそお前だけずるいと罵ってくれた方がマシだ。いつもの上から目線で、偉そうな口調で。
そんなことを思っている間に病院に到着した。いつもより少し重い足取りで病室に向かう。
コンコン、とドアをノックすると、落ち着いた声色の返事が返ってきた。引き戸をカラカラと開けると、ベッドに座る勿忘草色の髪。
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