お出かけ 日曜日、学校がない日。いつもはだらだらと家で過ごすところを、今日はデパートに来てみた。もちろん、兄さんと一緒に。
「一緒にお買い物なんて久しぶりだね。兄さん、いつも学校帰りいないから」
「そうだな、おしゃまと買い物というのも悪くないなと思って」
「兄さんとショッピング、嬉しいなあ」
「そうか」
兄さんはぶっきらぼうに言いつつも、そわそわとあたりを見渡して物珍しそうにしている。好奇心旺盛な兄さんのことだから、今日のショッピングはそれなりに楽しんでいるようだった。
しばらく洋服を見て回って、散々悩んだ末に気に入ったワンピースを一着購入した。フリルのついたワンピースは、兄さんに気に入ってもらえると思って買った。買った、というよりは買ってもらったと言った方が正しいのかもしれない。自分で買うつもりだったのに、兄さんが買ってくれたのだ。
「別に、自分で買えるからいいのに」
「いいんだ、こういうのは年上に払わせておけ」
「ふーん……。ねえ兄さん、ちょっと疲れた。休憩しない?」
「いいぞ。どこがいいんだ?」
「あっちのカフェ! 気になってたんだあ」
カフェに入り、コーヒーを頼む。兄さんはココアを頼んでいた。
「ねえ兄さん、パフェも食べたい」
「好きなものを頼め」
「やったー!」
追加でパフェを頼む。甘いものがそこまで好きなわけではないが、疲れた時には食べたくなるものだ。運ばれてきたパフェを食べる。生クリームが濃厚で美味しい。
ふと思い立って、兄さんの口元にスプーンを運ぶ。
「ん? なんだ?」
「兄さん、食べたそうな顔してた」
「してない」
「嘘だ! してたよ」
兄さんは観念したように口を開ける。兄さんの口の中にスプーンを差し込み、パフェを食べさせる。
「美味いな」
「うん、甘くて美味しい」
「間接キスだな」
「かっ……!」
少し思ってはいたことだが、指摘されると恥ずかしさが勝つ。ずけずけとした物言いは兄さん特有のそれだ。
「うん、兄さんとキスしたかった。ダメ?」
「……ううん。嬉しいよ」
コーヒーが冷めないうちに、次は本当にキスをしてしまおうか。そんなことを考えた。