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    28Umenko

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    モブロロです。🔔くんに恋に落ちるモブのお話。フォロワさんの小説のロロくんが指輪の石に口付けをして魔法を使うシーンが最高に好きすぎて…
    とりあえずここまで…。まだ続く予定です。

    ある青年の話 それを見たのは早朝の学園の中庭だった。
    自分にしては珍しく、目覚ましが鳴るよりずっと早くに目が醒めた朝。いつもなら早く起きたとしても目覚ましが鳴るまでずっとベッドでゴロゴロするというのに、その日は何故か、たまには良いかもしれないという漠然とした理由で制服に着替え、寮から学園に向かったのだ。そう、本当にただの気まぐれだった。
     今思うと、神の導きだったのかもしれない。
    渡り廊下を歩き、階段を下りて、中庭に出る。朝日が昇ったばかりの中庭は、見える景色全てが普段より明るく、濃く見える。空気が澄んでいるからなのだろうか。綺麗だ、と素直に思った。
     二度寝も気持ちがいいが、早朝の散歩も悪くない、と顔を綻ばせながら青年は中庭の隅々に目をやる。その時だった。誰もいないはずの中庭に人影を見つけたのは。
     修道服のような制服を身につけているその人物はピンと背筋を伸ばし、胸の前で手を組んでいた。その人物の短い銀色の髪がはらはらと風を受けて靡き、光る。
     この早朝に中庭に立つ、銀の髪を持った品のある立ち姿の生徒。
    「ロロ会長……?」
     すぐには分からなかった。
    生徒会長の象徴でもある帽子もローブも身につけていなかったから。
     自分の中のロロは冗談の通じない生真面目な人間。そんなイメージだった。優れた魔法士だと知ってはいるが、近寄りがたい存在だった。
     何をしているのだろうか、と歩いていた足を止め、近くにある柱に身を隠す。決して悪いことをしている訳ではないのだが、あまり気づかれたくはなかった。
    「…………」
     ローブを身に纏っていない腰がえらく目を引く。今まで気づかなかったが、細すぎないだろうか。思い切り掴んだら折れてしまいそうだ。手足が長い分、それが余計際立って見える。
     青年がロロの腰を凝視していると、不意に視線の先のロロが膝をついた。
     何事かと青年も隠れている柱から顔を出してロロの足元を見る。遠くからではあまりよく見えないが、そこには花壇があるようだ。
     そういえばロロがその花壇の花に水をやっているの何度か見たことがある。そうなると、ロロは早朝から水やりにきたのだろう。
     けれど、おや、と思う。
    ついていた膝を伸ばして立ち上がったロロの手にも足元にもジョウロはない。
     水をやりに来たのではないのか?そう首を傾げながら陽の光を受けるロロを眺めていた時だった。
     ロロが身につけている指輪の真紅の石に唇を落としたのだ。
     その姿に思わず息を飲んだ。
    ロロが指輪に口付けたのは一瞬だったのか、それとも数秒だったのかは分からないが、ロロが唇を離すと花壇の上に雨が降った。雨といっても、ロロの腰から下、しかもロロが両手を広げた幅くらいの狭い範囲だったが、青年には雨のように見えた。
     その雨は朝日を反射して宝石のように輝く。
    この一連の出来事が美しいと思った。祈りのようだと思った。
     どっ…どっ…と自分の心臓が強く跳ねているのが分かる。何故か胸が締め付けられるように苦しい。
     ロロの降らせた雨が止む。すると、ロロはすぐに身を翻しこちらへと向かってきた。
     まずい。いや、決して悪いことはしていない。見ていただけなのだから、全くもってまずくはないのだが、隠れなくてはと思った。
     けれど、身体は石のように固まったまま動かない。視線がロロから離せないのだ。だというのに、ロロは着実にこちらへ近づいてくる。
     こうなれば、と青年は腹をくくった。もう、諦めた。隠れるのはやめだ。
     青年は柱から身体を出し、ロロの前に立った。
    「ロロ会長、おはようございます」
    「……おはよう」
     突然柱から現れた自分にロロは驚いたように目を瞬かせたが、すぐにいつもの感情の起伏が乏しい顔に戻る。
     やはり、とっつきにくい冷ややかな印象。でも、今はその顔も神々しく見えるのは何故だろうか。
    「花の水やりですか?」
     そう問うと、ロロは顔だけを後ろへと向けて先ほど自分が雨を降らせて水をやった花壇を見た。
    「あぁ……いつもはジョウロを持ってくるのだが今日は忘れてしまってね。魔法を使わなくて済むものは極力使いたくはないが……」
    「……たまにはいいんじゃないですか?楽をしても」
     なんと返すべきか分からず、パッと頭に思い浮かんだ言葉を言ったが、ロロは青年の言葉にゆっくりと目を閉じて「そうか」とだけ応えた。
     しばしの沈黙が落ちる。
    なんだが、失望されたような気がする。失言だったかもしれない。
     俄かに焦り出す自分に対して、ロロは瞼を上げるといつものように胸の前で手を組んだ。
    「では、私はここで失礼する」
    「あ、はい……」
    「卿も早めに寮に戻って支度をするといい」
     ロロは足を踏み出す。
    行ってしまう、反射的にそう思って自分も足を踏み出した。ロロの進行を妨げるように。
     ロロはまさか青年が動き出すとは思っていなかったのだろう。気づいた時には肩と肩がぶつかってしまっていた。そして、バランスを崩して後方へと傾く青年の身体。
    「う、わ……!」
     青年が慌てて掴むところを求めて宙へ手を伸ばした時、手首を強い力で掴まれた。そして、そのことに驚く暇もなく、そのまま勢いよく引っ張られる。
     ぐわん、と目の前の景色が流れるように動いたのを認識した次の時には、自分の身体はロロの身体と触れ合いそうな程に近くにあり、目と鼻の先には涼しげな顔があった。
     どくんっと一際大きく心臓が跳ねた。
    「あ、あのっ…ロロ会長……!」
    「すまない」
    「え?あ、あぁ、いえ…!俺もすみませんでした、突然動いてしまって…!」
    「怪我はないか?」
    「あっ、はい…どこも…」
    「ならば良い」
     ロロは小さく頷くと、掴んでいた手首から手を離し、青年の肩に両手を置いた。そして自分の身体の前から避けさせると再び足を踏み出した。
    「あ!ロ、ロロ会長!」
     呼び止めるよう、張り上げた声にロロは青年を振った。
    「あ、あ~……えっと」
     真っ直ぐに見つめてくる目が居た堪れず、青年は目を泳がせる。
     特に用なんてなかったのだ。ただ、そのまま行ってほしくなくて、つい呼び止めただけ。
    「何か用事があるのではないのかね」
    「あ、ります!あ、あのですね……?その、え~…っと」
     ロロが身体ごとこちらに向き直る。
    何か話さなければと思うのに、全く何も浮かばない。あっと思いついた言葉も、自分を見るロロの瞳を見たらすぐに吹き飛んでしまう。
    「…………言いにくいことなのだろうか」
    「や、そういう訳では…」
    「ならば何だ。私も暇ではないのだが」
     ロロの眉が顰められる。そして同時に身体の前で組んだ指先をトントンと動かす。
     これは苛立っている。まずい、本当に何か言わなくては、と半ばパニックになった青年の目に飛び込んだのは真紅の石のついた指輪だった。
    「魔法を、使わなかったんですか?」
     気づいた時にはそう言って、自分の指の腹は真紅の石に触れていた。
    「……何の話かね」
     親しくもない相手に突然触られることは不快だったのだろう。
     ロロは自分の指輪に触れる青年の指を緩く払うと、言いながら青年から距離をとるように指輪をつけている方の腕を身体の横に垂らした。
    「いや、俺が倒れそうになった時のことですよ。魔法を使えば会長も無駄に力を使う必要なんてなかったでしょう。だって会長、細いじゃないですか。きつかったんじゃないです?」
     遠くからでも思ったが、近くで見ると一層思う。背は高いが、その分余計な肉がそぎ落とされているようだ。華奢な身体には力があるようには思えない。だというのに、顔色一つ変えずに自分を引き寄せるとは。
     自分は決して小柄でもロロのように華奢でもない。もしかしたら、この服の下には鍛えられた筋肉が隠されているのかもしれない。いや、ロロが筋トレなんてしているイメージは全く持って浮かばないが。
    「生憎、卿に心配されるほど軟弱な身体ではない」
    「あ、そうですか…」
    「それに、先程も言ったが、使う必要のない魔法は極力使いたくない」
     目を伏せ、ため息をつきながらロロは組んでいた腕を解く。けれど、すぐに何か思い当たったのか、青年を見ると小さく口端を上げた。
    「あぁ、でも先程はジョウロを取りに行くのが億劫で魔法を使ってしまったな。あれは忘れてくれたまえ」
    「いや、忘れられないですよ…」
    「ならば卿の胸だけに留めておいてくれ」
     そう言ったロロは、ふ…と控えめに笑うと今度こそ黒の制服の裾を翻し、コツコツと靴音を立てて去っていった。
     その後ろ姿が見えなくなったところで青年は身体の横の柱にもたれかかった。
    「…………俺だけが知ってるっていうことね」
     ぞく…と甘く痺れる身体を抱きしめながら、青年はそっと自分の指に触れる。
     すぐに避けられたけれど、ロロの指輪の真紅の石に触れたこの指。当然だが、石は硬く、冷たかった。けれどその石は知っているのだ。ロロの唇の柔らかさも、熱も。
     ロロの唇が触れた石。その石に触れた自分の指。
     青年はゆっくりと指を口元に寄せ、口付ける。
    「はは……間接キスってやつだ」
     そう呟きながら、青年は指に石を落とす。何度も、何度も。それでも物足りなさを感じ、今度は指をぱくりと咥え、舌を纏わせた。
     誰もいないとはいえ、外。しかも学園内。頭の片隅ではそう分かっているのに咥えた指に舌を絡ませしまうのをやめられない。
     自分の身体が熱を持っていくのが分かる。下着の中が窮屈になっていく。その時分かった。自分が今、ロロに感じているのは尊敬でも憧憬でもなく、情欲なのだと。
     天に伸びるように真っ直ぐと伸びた背筋、骨ばった意外と大きな手、自分を引き寄せた強い力、手首に残る掴まれた感触、感情の乗らない無機質な声、それを紡ぐ薄い小さな口。
    「……会長」
     全く気にもしていなかった。自分にとってロロは近寄りがたい、この学園の生徒会長。それだけだった。
     なのに、頭の中によぎるのは、一人祈りを捧げるように燃え盛る炎に似た真紅の石がついた指輪に唇を落とすロロの姿。
     あの姿に、自分は魅入られた。
    口の中から指を離し、青年は自分の唾液でぬらりと光るそこを恍惚とした目で見つめる。
     この指にロロの熱が残っていればいいのに。感触が残っていればいいのに。あの唇に触れることができたらいいのに。
     あの唇に自分の唇を重ねて、硬く引き結ばれた唇を舌で割って、寸分の狂いなく一列に並ぶ歯を抜けて、舌に触れて――。
     ロロにガールフレンドがいるという話は聞いたことがない。そもそもあの禁欲的な雰囲気からして経験なんてないだろう。
     初めてのキスにロロはどんな反応をするだろうか。何をされているのかわからず、あの人間味を感じさせない表情を崩し、目を白黒とさせるのだろうか。いや、きっとロロは自尊心が高い。やられるばかりでは性に合わないと積極的に舌を絡めてくるかもしれない。
     どちらでもいい。自分はロロの緑の瞳が潤んで腰の力が抜けるまで、舌を絡ませ、歯列をなぞり、舌の裏も歯の裏も口蓋も舌先で擦ってやるのだ。
     キスだけで蕩けてしまうロロはどれほど扇情的だろうか。
     眉を八の字に垂らし、唾液で唇を濡らしたロロが縋るように自分を見つめる姿はきっと自分の情欲を掻き立てるのだろう。
     不意に強い風が吹き、ぶるりと身体が震えた。その感覚に青年はっと我に返り、辺りを見回す。中庭にも、自分の横にも前後にも誰もいない。自分のこの行動を見ている人は何もいないことを確認し、ほっと一息つくと気になるのは自分の下腹部。そこは濡れてこそいないが、すっかりと立ち上がり山を張っていた。
    「……今日は遅刻だなぁ」
     これは一回出すだけでは落ち着かないだろう。青年は唇を舐める。濡れた指に触れながら今からの慰めの行為に胸を弾ませると、軽い足取りで寮の自室にへと足を進めたのだった。
     
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