誕生日に寄せて。ややぎこちない筆跡。親愛なるラニーさんへ

　主の御名を賛美します。

住所をお教えしていないのに手紙が届くとは不思議なものです。これも我が神のお導きでしょうか。
私の方ではあれ以来も素敵なご縁に恵まれまして、大変充実した毎日を送っております。ただ、中々自宅へ帰ることができず、お返事が遅れてしまいました。申し訳ございません。遅ればせながら、お誕生日おめでとうございます。
4月23日がお誕生日とのことですので、来年は直接お祝いにうかがいます。奥様がご住所を伝えてくださるのを楽しみにお待ちしておりますね。先日奥様にお教えいただいた番号は間違っておりましたので、そちらも正しいものをとお伝えください。
ラニーさんはクリスチャンとのことですのでご存知かとは思いますが、4月23日は聖ゲオルギオスの日です。絵画等では白馬にまたがる姿が象徴的な聖人ですね。ラニーさんもも聖ゲオルギオスのように夜は荒々しく乗りこなしていらっしゃるのでしょうか。むしろ乗るのは奥様の方がお得意そうではございますが。

ヒアソビとコイ　氷に閉ざされたスネージナヤからやってくると、風光明媚で自然豊かな景色が広がる璃月ですら暑く感じてしまう。もう七月も半ば過ぎだ。気温もそれなりに高く、夕立が降ることもある。
　北国銀行は、氷の女皇が統べる国スネージナヤの組織ファデュイの監督下にある拠点のひとつだ。ファデュイの執行官であるタルタリヤは、その璃月支店に度々顔を出す。今朝、北国銀行の総取締役である『富者』が視察のため本国スネージナヤからやって来たと知らされ、急いで居室を出て北国銀行に向かっているところだ。
　しばらく前に、遠く稲妻の地で果てた執行官『淑女』の追悼のためにタルタリヤもスネージナヤに戻っていたが、それ以後も璃月と本国を行ったり来たりの日々を過ごしていた。スネージナヤパレスは息が詰まる。璃月ではタルタリヤも比較的自由に行動ができるのだが、『富者』が視察に来たとなれば話は別だ。

【R18】不意の営巣（アルカヴェ鳥パロその③）ぽかぽかと窓から差す優しい陽気で目を開ける。
目覚めると、愛しい番の寝顔がすぐ傍にあった。

「……おはよう、アルハイゼン」
「……」

呼びかけても微かに身じろぎをするだけ。余程仕事で疲れていたのだろうか。それとも休日で甘えているだけか。とにかく、アルハイゼンはまだ夢の世界から離れたくないらしい。

「（ふふ、また寝癖がついてる……あとで直してあげよう）」

ぴょこんと変な方向に跳ねている前髪。あどけない寝顔を晒す彼だが、れっきとした猛禽類。今は人間の姿をとっているが、本来の姿は神々しさすら感じるほど立派な隼である。おそらく、普通の人間が元の姿を見たら腰を抜かして逃げ出すだろう。

人間に騙され、愛玩用として売られそうになったところを救出されてらから、もうすぐ一年がたつ。あの時の自分は誰かの番になることなど考えもしなかったし、かつて助けた若鳥が逞しすぎる成長を遂げて帰って来るなど夢にも思わなかった。