嘘つきとささくれ「それは俺が着ても意味ねーだろ」
一つ上の兄は嘘がつけない。その強い語調とは裏腹に、チョロ松は寂しそうな目でポツリと呟いた。否定はして欲しいけれども、同時に、否定して欲しいわけではない。肯定されたいわけではないけれども、緩やかに肯定された方がホッとする。一松と同じく、どこか自分に自信がない兄は、そんな前向きな後ろ向きを望んでいるようだった。
「……まあ。そうだね」
だから一松は、ゆっくりと頷いてから、あまり感情を込めずにそうこたえた。
言わされた台詞ではあるが、決して全部が嘘というわけでもない――そういう一松の心の内を感じ取ったのか、チョロ松はやっぱり傷付いた顔をしているし、どこかホッとした顔もしている。相変わらず考え方がややこしくて、結局お前はどっちなんだと言ってやりたい。自分が言うのもなんだが、とても扱いにくい面倒な人だ。
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