Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑨―赤井Side 6月―
修学旅行の最後の夜。
赤井は、これまで経験したことのないようなひどい頭痛を覚えるのと同時に、自分が“本当は中学生ではない”ことを思い出した。
いや、正確には、小さな頭痛を伴い何度も思い出しかけたことはあった。
これまで何度か訪れた、記憶違いかと思われた“小さな違和感”が、まさか失くした記憶の断片だったとは思いもよらなかった。
降谷も自分と同じように、何度も小さな違和感に首を傾げていたのを思い出す。
しかし、降谷はまだ記憶を取り戻してはいないようだった。
六月七日、金曜日。朝、目が覚めると家の中に降谷の気配がなかった。
『日直なので、僕は早めに学校に行きます』
RX-7の裏にあるボタンを押すと、降谷の声が聞こえてくる。その声は、自分が良く知るそれよりも幼くて可愛らしい。
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