Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    WWA_Dream

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    WWA_Dream

    ☆quiet follow

    マルと星くんってどうあがいても思想が合わないよね

    無題2024年2月21日 午後10:26


    2024年9月1日 午後9:21

    「今の調査団はこんなに良いものを食べているのか?」
    「……。いや、そうでもない……と思う。」
    「どっちなんだ。」

    大きな肉を中心に、高さを出して配膳されたワンプレートを食べる男が嫌いだ。吸い込まれるように消えていく様が気持ちいいくらいだとか、思っても口に出してすらやらない。
    いつも引き結ばれたこいつの口が肉を噛むのを、ぼくは少し遠くに立って、壁に持たれて見ている。
    ぶちぶちと肉の筋繊維が切れる。口の中に消えていく。油を流し込むように果実を沈めた水を喉に傾ける。

    不意に翼竜の甲高い鳴き声が聞こえて、ぼくは天井に目を向けた。短い感覚で音が共鳴し、ギリギリの均衡を保っていた砂が一筋落ちる。ここは大蟻塚の崩れた一角にあるから、滅多なことがない限り安全だ。それでもぼくはなんとなしにそれをじっと見詰めていて、癪だがこいつもそれを見ていて、後に続く物々しい咆哮が聞こえないことを確認してから、ようようと口を開いた。こいつの口は、自身のことを語る時は、殊更重かった。
    「……。優遇して、もらっている。」
    「君だけか。」
    「……。……。恐らく。」
    ふん、と鼻を鳴らして問うと返ってきた非常に曖昧な言葉が、ぼくの心を逆撫でする。その感情に目を向けていたらきりがないから、無視するけれど。
    「……イ、ヴェルカーナ、が現出した時、新大陸の寒冷化で食糧難になって……。」
    「知ってる。彼も寒いと言っていた。」
    「それで、ああ、確か、物が少なかった。それは……それは、とても良くないことだ。でも、その日の夕食の皿は、相変わらず豪華だった。」

    ぼくが黙ったのは言葉が足りなかったからだとでも思ったのか、こいつは聞いてもいないことをぽつぽつと呟いていく。
    そんなことは聞いてないんだよと詰ってやることも出来るが、どうせ意味がないだろう。
    根本的に人間との関わり方を理解していないのだ。
    それを人間との関わりを捨てたぼくに指摘されそうになるくらいには、こいつは、君は、真人間でない。

    あらかた片付けられた皿の、付け合せの芋でちまちまとソースを拭う目の前の男は、自身の口で語ったことをどこまで理解しているのだろうか。
    「この食事は期待だ。この肉の大きさだけ、仕事が出来ると思われている。そして、実際に出来る。期待は成せる。」
    ソースをすっかりすくい上げた芋を指でつまんで、こいつは言う。

    「だから、全部食べるんだ。」

    とろみのある黒茶のソースは、きっとこいつの殺した生き物の脂で出来ていた。

    「……あ、そう。」
    「満足したか?」
    「何にさ。」
    「話に、だけど……。」

    「……わかったよ。君との話はいつも通り無駄だった。」

    嗚呼、甲高い鳴き声が聞こえる。
    ぼくは付いてもない汚れを払うように腕を数度撫で、こいつは食器替わりにしていた葉を焚き火に焚べる。
    『彼』が来たなら、これ以上こいつと話す必要はない。彼の姿を拝ませてやる必要も無い。
    「行くのか?」
    「行くよ、そりゃ。」
    「そこにアレもいるのか。」
    「君にそれを教える謂れはない!」
    つい声を荒らげたぼくに、こいつはどこまでも平坦な声で、「そうか。」等と返すものだから、気持ちが凪ぐどころではない。逆だ。

    本当に、君のことが嫌いだ。

    きゅうと、声が聞こえる。
    『彼』の背に飛び降りるとき、君がぼくを見る目の感情は、相変わらず黒々としていて、わかったものではなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator