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    忸怩くん

    @Jikujito

    鋭百、春夏春、そらつくとか雑多

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    忸怩くん

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    【鋭百】「指」全年齢の雰囲気えっち

    誘い 帰宅ラッシュもとっくに過ぎたような遅い時間だが、塾やバイト帰りの学生、遊んできた大人たち、疲れた顔のサラリーマンなんかで意外と電車は混む。雑然とした車内のドア横のスペースに百々人と身を寄せて、特に話をするでもなく窓の外を過ぎるビルの明かりを眺めていた。自分はこのまま乗っていれば最寄りまで着くが、百々人の乗り換え駅まではあと数駅ほどだ。各駅停車の車両は急ぐことなく淡々と夜の高架を走る。
     つり革につかまっているのとは反対側、空いた右手に百々人の指先が触れた。電車の揺れで偶然触れただけかと思われたそれは、つん、つん、と間をおいてまた触れる。
    「……百々人?」
     控えめな声で名を呼んだが百々人はそれに答えることなく、その辺の床に視線を向けたまま釣り餌の様子を見る魚のように指をつついていた。そのまま好きにさせているとそうっと人差し指が絡められる。指先しか触れあっていないのにそのわずかな接点を意識してしまって、その体温にばかり気をとられる。窓の外なんて見ているようでもうただ視線を向けているだけだった。
     制止することなくされるがままになっている眉見の態度を許可ととったのか、引っ掛けていただけの指が眉見の指の先から根本まで指の腹を擦るような動きのあるものになり、骨のかたちや肉の弾力を確かめ楽しんでいる。くるくると第二間接の骨をなぞり爪先までいくと、つぶしたりこすったりと今度は爪を弄び始めた。コートの裾に隠すようにしながら、ただ隣同士に立っているだけのすました顔のまま丁寧に味わうように指をなぞっていく。すぐ近くに人のいるなかで隠れて触れられているちいさな背徳感のようなものがあり、爪の表面をこするわずかな刺激さえも過敏に拾って背中にぞくぞくと快感めいたものが走る。凪いでいたはずの水底から腹の奥にある熱い欲が揺り起こされて、目の前の男にもっと深く触れたくなってしまい、血の昇る頭をすっきりさせようと深い深呼吸をした。
     駅についてばらばらと人が降りてまた乗ってくる間にも、戯れは隠れて続けられる。人差し指から中指へ移り全部の爪を楽しみつくすと、今度は指の付け根の水かきに指の腹を擦り付けて行き来しはじめる。肌と肌をこすり合わせるその動きに苛立ちにも似た脳の沸く欲を抑え込んでいたが、互いにしっとりと汗ばんでいるせいで滑りが悪く、途中から水かきを指先で揉みこむ動きに変わった。手は下ろしたままこちらからは何もせず百々人の思うようにさせているのだが、変に力が入って構えてしまいうまく力を抜けそうにない。百々人の指はその少し緊張している親指の付け根の肉を揉んで、手の甲の血管のふくらみをなぞっては押すと逃げていく様子も楽しむ。再び指先へとたどり着くと指の腹を爪でかりかりとかくから、くすぐったい刺激が与えられて脳がじんとしびれ思考が停滞する。
     まもなく駅に着くというアナウンスが流れ、百々人の乗り換え駅がドア上の液晶に表示された。少し悩んでから、百々人、と呼ぶと、今度は顔を上げて小首をかしげるとあざとさのある上目遣いでのぞき込まれる。
    「なあに、マユミくん」
     じ、と目を合わせたままマゼンタの瞳の奥がとろとろと揺れていて、そこにホームの明かりが映っては次々と流れていく。その間も右手は中指の先だけ引っ掛けて持ち上げるような形でとんとんと爪をやさしく叩かれていた。百々人から言葉にする気は更々ないようで、互いに目を合わせて数秒もすると眉見の方が根負けして仕方ないなとあきらめ混じりのため息をついた。それを見た百々人は声に出さず吐息だけで笑うと、機嫌よさげに中指がきゅっと握る。
     発車のメロディーが鳴ると開いていたドアが閉じ、ゆるやかに動き出した電車は次の駅を案内する。コートで隠した指先はゆるやかに絡まったまま、熱を持った手を繋げていた。
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