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    _pepipopumpkin

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    くりかぼちゃ。うちよそ描いたり書いたりしてます。

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    【オリハンひゃっほう】2024.3.9〜3.10
    で展示していたユウムツSSです!こっちでは常設。

    Good luck 「なに、あんたまだ悩んでるの?もうすぐホワイトデーでしょ?」
     久方ぶりの故郷への帰省。ゆっくり体を休めようと思っていたが、家の中どこにいても上の空の弟を見かねてつい口を出してしまった。
     「ムツミは今年も手作りのチョコくれたし、俺も手作りを返した方がいいのか?でもこの間エルガドで見かけたお菓子美味しそうっつってたしな……だからってそれをあげたら市販品は心がこもってないと思われそうだし……」
     ユウヒは呪文のように独り言を呟いている。ここは姉として助言してやった方がいいのだろうか、それとも悩むことも恋の醍醐味だと割り切って傍観すべきか。
     「……」


     結局、ため息の絶えないユウヒを気分転換に里へ連れ出してきた。
     (ずっと見てるとこっちまで気が滅入るしね)
     景色は変わらないが、百竜夜行が収まり少し活気づいた里を散策していると、オトモ広場へと続く吊り橋の前で黒と白の2匹のアイルーに声をかけられた。
     「あ!アカネさんニャ!久しぶりニャ!!」
     「久しぶりですニャ!ユウヒさんもこんにちはですニャ!」
     元気よく前足を差し出してきた2匹と握手を交わす。
     「久しぶりね、えっと……」
     「かぼちゃと、」
     「くりですニャ!」
     「そうそう、黒がかぼちゃで白がくり。いつも間違えそうになるね」
     気にしていないという風ににっこりと笑顔を向けてくる2匹を、ユウヒもしゃがんで撫でてやっている。
     「今日はこたつさんいないのか?」
     「ニャ。旦那さんは今あずみとしおりを連れて遠征に行ってますニャ」
     「今回お留守番なのニャ」
     じゃあ相談はできねぇなー、と立ち上がりつつ伸びをしたところで、ぐうと腹の虫が鳴った。
     「そういえば、ちょうどお昼に茶屋へ行くところでしたニャ」
     「旦那さんにお団子券たくさんもらってあるから一緒に食べるニャ!」
     どこから出したのか2匹の手にはいつの前にかお団子券が握られている。
     「じゃあ、お言葉に甘えようか」
     「そうと決まれば茶屋へレッツゴー!ニャ!!」

     「いらっしゃい、2人とも。ご注文は?」
     「んー、俺はいつもの……」
     ヨモギちゃんに渡されたメニューを見たユウヒの動きが止まる。そこには“期間限定”の文字。
     「なあ、これなんだ?」
     「それね!エルガドから取り寄せた“食べられる染料”で色を変えてみたの。今だけの、ホワイトデーうさ団子だよ」
     「へぇ……その染料ってまだ残ってるか」
     ユウヒの顔が心做しか晴れたように見える。そしてヨモギちゃんの返事を聞くとそれは確信に変わっていった。

     * * *

     「冰の龍、目撃例が極めて少ない古龍種だ。以前猛き炎が討伐したと聞いたが……別の個体か」
     「早急に討伐、もしくは元の縄張りへ撃退すべきかと」
     「……頼めるか、ムツミ殿」
     「だって倒さないと、カムラへ帰れないんでしょ?じゃあやるしかないよね!任しといて!」
     誇らしげに胸を叩くとガレアス提督の言葉を待たずに颯爽と駆けていった。向かうは受付嬢チッチェ姫のところだろう。
     「頼もしい限りだな」
     「私には少々危なっかしい気もしますが」
     「それはフィオレーネ、おまえも同じだぞ」
     「うっ、その件は本当に――」


     「なんか今日の溶岩洞寒くない?気のせいかなー」
     「ワフ」
     意気揚々とクエストを受注して来たはいいものの、いつもと違う狩り場の雰囲気にガルクのツムギはそわそわと落ち着かない様子だ。
     「ほんとに大丈夫かニャ?まったく知らない古龍相手に1人で挑むのは無謀ニャ」
     「何言ってるの。こたつはそれで風神龍雷神龍を倒したんでしょ、アタシにできないなんてことはない!それに、こたつはギルドも把握してなかった未知のモンスターと戦ったんでしょ。アタシがこれから挑むのは、調査が進んで、」
     刹那、冷気を孕んだ風が彼女の前髪を撫でた。
     「……?!」
     冰龍が目前にいると身構えたが、それらしい影は見当たらない。
     (いないけど、いる。絶対、この先にいる)
     「……ふー。行こ、ふたりとも!」
     「ニャ」
     「ワフ」

     
     寒い。否、そんな段階はとっくの昔に通り越して痛みを伴って冷気が身体を蝕んでいる。
     凍てつく氷のブレスで1回目、槍のように鋭い尻尾の一突きで2回目。凍えた四肢では普段通りの動きができず、既に2度キャンプ送りにされている。もう後がない。
     (やっぱり無理だって断れば良かったかな)
     (今から救難信号出しても遅いかな)
     (……ユウヒ何してるかな)
     頭の中に取り留めもない考えが浮かんでは泡のようにぱちんと弾けて消えていく。後悔なんて柄じゃないのは百も承知で、今この時も足は止めずに冰龍の元へと進んでいる。
     
     疲労困憊。だがそれは相手も同じこと。冰龍の纏っていた氷は剥がれ落ち、一回りほど小さく見える。空を衝いていた冠は折れ、防具を切り裂いていた爪は鎧を引っ掻き耳障りな音をたてるのみである。
     串刺しにしようと飛んでくる尾を躱せば隙ができる――ここ数刻で見つけた反撃のチャンスだ。
     「……ッ!」
     満身創痍のムツミにとどめを刺そうと、息巻いて尻尾を丸めるイヴェルカーナ。
     (予備動作!いける!!)
     前転で躱し1回、得物を振り上げ遠心力で上半身を逸らして2回。
     「絶対に――倒す!!」
     3回目の突きはムツミに届くことなく、冷気を統べる者は徐々に温かくなり始めた溶岩の地に倒れ伏した。

     * * *

     「なあムツミ。いい加減機嫌直せって……」
     「別に。ユウヒはアカネサンの見送りに来ただけなんでしょ?だったらちゃんと行ってらっしゃいって言ってあげなきゃ」
     「だから、知らなかったんだって。ムツミがこんな、こんな……」
     大怪我、という程ではない。自分の足で立って歩けるし、ご飯も食べられる。夜もしっかり寝られるし、日常生活に支障はない。ただ、あちこちに巻かれた白い包帯が痛々しい。
     「体中包帯巻かれて湿布貼られてさ。これがほんとのホワイトデーってね、はは」
     「笑えないぞ」
     「むぅ……機嫌悪いのはユウヒの方じゃん。いつもは笑ってくれるのに」

     こんこん、と控えめなノック音が響く。
     「ユウヒ?もう船出るってさ、私行くからね」
     「姉ちゃん……」
     「なに、また喧嘩してるの?ごめんねムツミちゃん」
     「ううん、いいの。ほらユウヒ見送り行って来なよ」
     ユウヒはゆるゆると首を振ると、ベッドの縁に腰掛けた。意地でも行かないらしい。
     「じゃあね、また帰ってくるから」
     「おう」

     「ねぇユウヒ。行ってきますと行ってらっしゃいは、ちゃんとしないとダメだよ。“絶対生きて帰ってくる”と“ずっとここで待ってる”の約束なんだから」
     エルガドに汽笛が響く。
     「ずっとここで、帰りを待ってるって送り出してあげなきゃ……ほら早く!アタシここで待ってるから、早く!“行ってらっしゃい”!!」
     「……」

     
     (あーあ、ユウヒったらまたムツミちゃんと喧嘩して……喧嘩するほど仲がいいって言うけど)
     ゆっくりと波間を進み出した船の上、アカネは弟の恋路を憂いていた。
     ふと、小さくなるエルガドでガルクに跨る人影を見つけて顔を上げる。
     (ユウヒ……?)
     「姉ちゃーん!行ってらっしゃい…!!」
     「!」
     ちぎれんばかりに手を振る弟に手を振り返す。
     「行ってきます、ユウヒ」
     (それと、ムツミちゃん。ありがとう)

     「さて、帰るか!ムツミんとこに。ちゃんとただいまって言ってやらないとな」
     「ワフン!」



     


     
     「で、ユウヒ。ホワイトデーのお返しは?」
     「う。それは、もう少し待ってくれ」
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