特別な日に朝起きてスマホを手に持つ。7月14日。別に身近な人の誰の誕生日な訳でもない。大きなイベントがある訳でもない。ただ俺にとっては、俺達にとっては特別なその数字の並び。言い出したのはどっちだったっけ?
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高校2年の夏。全国大会出場を決め更に気合いの入った練習に毎日追い込まれていたそんなある日。
制服から練習着に着替えて部室のソファに座る。バッシュの紐を足にフィットするようにしっかり結び上げていると隣で長い両足を投げ出していた三井があ、と声を出した。俺の背中をバシバシと叩く。
「宮城、なぁ」
「いてぇいてぇ。ちょっと」
「今日は何の日だ」
「はぁ?」
別に誰かの誕生日ではなかったはずだし。朝のテレビで『ひまわりの日』なんて言ってどこぞのひまわり畑が紹介されていたが三井がそれを知っているとは思わない。宮城は屈んだまま三井に顔を向けた。三井が何を見てはしゃいでいるのか、目線を合わせるように体を起こすとインターハイまでの日数をカウントダウンしていくカレンダーが目に入った。7月13日まで1日ずつ斜線が引かれていて今日は7月14日。
「・・・?今日、何?」
「7月14日だろ?」
鼻先にビシッと人差し指を突きつけられて若干退く。
「7」
次に三井自身を指差して言う。
「14」
「・・・背番号?」
首を傾げながら口にした言葉に三井は満足したらしい。目を細めて白い歯を見せて嬉しそうに笑う。
「そーだ!"俺達の日"だろ?」
「!!」
三井の笑顔と言葉に一気に顔が熱くなった。それを見て三井の顔も赤くなる。
「ばか、宮城。なんつー顔してんだよ。こっちまで恥ずいだろーが」
「・・・うっせ。アンタが悪ぃ」
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「・・・ん、みやぎ?」
「三井サン、おはよ」
隣にあったタオルケットの山がもぞもぞと動いて人の顔が出てきた。
三井が気怠そうに身体を起こす。開き切らない瞼にそっとキスを落とす。
2人でシャワーを浴びて。テーブルに向かい合わせで座って朝ごはんを食べる。もう当たり前になってきた毎日の光景。
「今日7月14日だよ」
「ふは、お前まだそれ言ってんのかよ」
「ふふ、アンタが言い出した癖に」
三井を見ると目を細めて歯を見せて。あの時と同じ笑顔で笑った。それを見て俺はやっぱり今日を特別な日にしたいと思った。ふぅーっと大きく息を吐いてもう一度三井を見る。
「ねぇ三井サン。俺と、」
fin.