アンコールブルーム「美味しい……!甘酸っぱくてほっとする味ですね!」
「たしかに心安らぐ味だな。甘いスコーンとも相性が良くて紅茶がすすんでしまうよ」
授業が終わり、生徒たちの談笑する賑やかな声が廊下中で響く頃、私と若き友は執務室で近況を語り合いながらローズヒップティーの味に舌鼓を打っていた。城中を彩っていたハロウィンの飾りが片付けられ、肌寒さが増した季節にハーブティーの温もりが染み渡る。
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「それで今度ポピーと一緒に魔法生物についてレポートを書くことになって……あれ?もう飲み終わっちゃった。ははは……楽しい時間はあっという間だなぁ」
友の苦笑い混じりの言葉でティーポットの中を確認すると、ローズヒップの赤い実だけが底の方に残っていた。本当に時が経つのは早いものだ。だが──
「ふむ。そろそろあれを用意する頃合いだろうか──アクシオ」
引き寄せ呪文で戸棚に置いておいた砂糖の入った小瓶を私の元へ引き寄せると、若き友の口から感嘆の声が漏れた。
「わっ!以前みたいに杖を使わずに引き寄せてしまうなんて、やっぱり先生には敵わないなぁ……でもこの砂糖をどうするのですか?」
「お褒めに預かり光栄だ。砂糖とローズヒップの実でジャムを作って味わおうかと思うのだが、君も如何かね?」
「……!そういうことでしたら、私もお手伝いします!」
調合台お借りします!と言うや否や友が席を立ちジャム作りの準備を始めた。うっ悪戯な笑みを浮かべながら放たれた「ここも片付けますね」という言葉に耳が痛む。先程まで眉を下げカップの底を物寂しげに見つめていたというのに、あの明るく輝く表情といったら、まるで──
「秋に再び花開く薔薇のようだな」
「……?せんせーい!何か言いましたか?」
「ふふ、なんでもないよ」
私の返答を聞いて友が一瞬だけ納得のいかぬような面持ちをしたものの、すぐに魔法でつけた調合台の火に視線を戻した。
賑やかな城に反して静かな執務室のなか、気づけば夕日が執務室を照らし始めていたが、これでもう少しだけ若き友と穏やかな時間を過ごすことができそうだ。