アプリコットの花言葉 型にチョコレートの生地を流し込む。砂糖とバター、真心も込めて。授業で惚れ薬のことを習ったけど、愛の妙薬を加えるなんてもってのほか。あぁ…でもさっきアプリコットを煮詰めていたときに不安な気持ちが混ざってしまったかも。
(先生ならきっと喜んでくれるよね)
不安な気持ちを払拭するように首を振る。ここからの作業はとくに集中しないといけないのだから。魔法で生地を無事焼き上げる、でも出来上がった生地をスライスする手は、震えてしまった。なんとか半分に分けた生地の片方に、作っておいたアプリコットジャムを塗ってもう一枚を重ね合わせる。甘酸っぱいジャムが挟まれた生地の上からほろ苦いチョコレートをたっぷりとかけていくさまは、淡い恋心に蓋をする臆病な自分を見ているようだった。
(よし。あとは渡すまで冷やしておくだけ)
こうして先生であり師匠であり、友人であるフィグ先生へ贈る小さなザッハトルテが完成した。片付けが終わったら、日頃の感謝を伝えるカードを書こう。そう…このザッハトルテは、畏友に感謝を伝えるためのお菓子だ。そうやって自分に言い聞かせていなかったら告白どころか、チョコレートを贈る勇気すらも出なかったと思う。愛しい貴方への贈り物ですと伝えるのは、まだまだ時間がかかりそうだな。
アプリコット
花言葉 乙女のはにかみ、臆病な愛