眠れないベジータ「……はぁ」
ベジータは、薄桃色のインクをぶちまけたような、静かでどこか不気味で幻想的な空が広がっているのを眺め、うんざりとため息をついた。のろのろと寝返りをうつと、先ほどまで苦しそうに軋んでいたベッドのスプリングが再び軋む。それを聞いて腹の奥がズクンと疼き、同時にどろりとした感触が太腿を伝うのを感じて、またしてもため息をついた。それも無視して瞼を無理やり閉じていたベジータであったが、次第にこめかみがピクピク痙攣しだす。
「……ッ」
何度も寝返りを打ち、そのたびにベッドが軋む。深呼吸すると、少し前まで野獣の如く荒れ狂っていた同族の太陽のような匂いと共に、独特の生臭い匂いが鼻をつく。大の字になると、すぐそばで寝ている奴の腹部に腕が直撃し、「うぐ」と呻くのが聞こえ、ベジータは少し気分が良くなった。しかしそれも束の間で、もったりとした眠気と、じっとしていられない妙な感覚とが同時に襲いかかってきて、堪らずベジータは目を開けて空を眺めた。
1878