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    erizoo

    @erizoo_WT

    とても表では出せない性癖と恥を晒す場所です。心が太平洋より狭い方、非推奨です。注意書きはしますので、自衛の上ご覧下さい🥺

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    erizoo

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    先日あげた半人パロ『you're my partner』の小説と言うよりは世界観の説明と導入、みたいな…。
    ビックリするぐらい纏まらなくて一万文字ぐらいある……😂先に言っとくけど、小説知識ドドドと素人だから色々間違ってるだろうし、ガタガタで読むのしんどいと思う。ごめん。それでもと言う強者はどうぞ、、🙏

    『選ぶ者、選ばれる者』「はぁ〜…」とため息をついて、修は先程学校で配られたプリント用紙を綺麗に折りたたんでカバンの中に詰め込んだ。
     1日の終了の挨拶が終わった教室の中では、皆んな帰り支度をしながら”ある話″で盛り上がっていたが、修はできるだけその話を耳に入れない様にしながらそそくさと教室を出た。湿った空気の匂いとじきに降ってきそうなどんよりとした空が昇降口の先から見えて、修はビニールの置き傘を引き抜いてから静かな校庭を重たい足取りで横切った。
     
     「はぁ〜…。」今日何回目のため息だろうか。修は今から向かう場所のことを考えてはまた気分が落ち込む。その場所とは『半人保護施設』と呼ばれる、その名の通り半人と呼ばれる種族が保護、管理されている施設の事である。
     この世界には人間以外にも、『半人』と呼ばれる人間とその他の生物の特徴を併せ持った種族が存在していた。
     成体化した彼らはその種特有の高い身体能力や、特殊能力を使いこなし、個体は差はあるものの人間とほぼ同等の知能を有している。
     この世界の発展の殆どがその半人達の協力によって成し得られたと言ってもいい。言わば人間達からすると半人は憧れであり、人間の圧倒的上位種族の様な存在なのである。
     しかし、そんな半人達が人間と共存の道を選んでいるのには理由があった。
     それは圧倒的個体数の違いである。繁殖能力、、と言うよりは半人として成体化する過程に問題があったからだ。
     半人は他種と人間の血が混ざって生まれた存在(とされているの)だか、半人同士の親からしか生まれず、生まれ落ちた時必ず人間以外の形をしている。それはその半人の原種を示しており、犬や鳥であったり、魚であったりする。珍しい個体であれば恐竜種や神獣種と呼ばれるものもいるらしい。
     まぁ、そんなものは基本一般民間人であれば一生お目にかかることもないのだが……。
     そしてその幼体は“人間”が愛情を持って育てた時のみ『半人』として人と原種の特徴を併せ持った種族に進化する。
     そんな神秘の種族が半人なのである。
     故に半人は人間に比べ圧倒的に個体数が少なく、人間と共存の道を選ばざる得なかったとも言える。でなければ己達は永遠に家畜と変わらない獣のままに過ぎなかったのだから。

     なんて言う諸々の事情で、人間と半人は手を取り合い、人間は6歳になると16歳になるまでに己のパートナーとなる半人の幼体を最低1匹は選び育て保護する事が法律で決められている。
     これはこの世界の常識であり、人間が最優先で守らなければならない義務でもある。


     「やぁやぁ、修君今日も来たね!」
     そう言っていつもの受け付けで赤縁の眼鏡をクイっと上げた美人のお姉さんがニコリと笑いかけてきた。
    「こんにちは、宇佐美先輩。毎日お手数かけてすいません。」
     やって来たのは修が暮らす三門市にある半人保護施設の1つ『玉狛支部』である。
    この国では半人は全て半人保護機関(ボーダー)と呼ばれる組織が管理しており、ここはその幼体を管理保護する支部の1つである。
     「いいよ、いいよ、そんなの気にしないで。今日こそ、素敵なパートナー見つかるといいね。」
     そう言って宇佐美先輩は嫌な顔ひとつせず受付を済ませ、手慣れた様子で厳重に施錠された保護区域への扉を開けていく。この2人のやり取りもすでに両手両足では数えきれない。
    「それじゃあ、もしパートナーが決まったらその子を連れてこの受付で必ずパートナー登録をしてから帰ってね。それ忘れちゃうと罰則が課せられちゃうから気をつけてね。」
     頑張ってね〜とニコニコと手を振りながら見送る宇佐美先輩に軽く頭を下げてから修は保護区域の森の中を進んでいった。

     少し進んだところで、木の根元の草の陰みに小さな獣の影を見つけた修は思わず駆け出しそうになる気持ちを抑えてゆっくりと足を進めた。チラリと覗いた影から、光に反射する金の瞳が2つこちらを警戒した様子で覗き込んでいた。
     小さな猫…猫の半人の幼体だった。修は肩に掛けていた鞄からタッパーを取り出して蓋を開ける。中には切り分けた魚肉ソーセージを入れて来てある。それを手のひらに少しとって身を屈めながらそっと猫の前に差し出した。
     「おいで、お腹減ってないか?」
     それでも警戒する猫を安心させようと、修は手の中のソーセージを1つ摘んで自分の口に放り込んだ。
     「ほら、おいしいぞ。」
     今よりも少しだけ距離を詰めて伸ばした手を近づけた瞬間、猫は素早くカケラを1つ咥えて修から大きく距離をとった。あっ!!と、修が何か反応するよりよりも早く、チラリと修を一瞥だけして猫はあっという間に茂みの奥に消えていった。
     まるでお前は要らないーーと言わんばかりに。

     片手を伸ばし地面に伏せて、尻だけを上げたなんとも情けない格好のまま、修はまたため息をついた。
     今回考案したエサ吊り作戦も失敗に終わってしまった。
     のそのそと起き上がって残ったソーセージをタッパーにしまってから、制服に付いた土埃をはらって修はその場に座り込む。
     「はぁ、どうしよう……。」
     そんな独り言が、日の陰った森の中に小さく消えていく。

     修にはどうしてもすべき事があった。
     修の幼馴染のお兄さんであり、一時家庭教師をしてくれていた人物がある日失踪してしまったのだ。      
     それを知って修自身も色々と探してはみたが所詮子供の出来ることなど知れている。警察も結局詳しい事は何も掴めず、現在も何もわからないまま時間だけが過ぎている。
     ……ただその時小さなある噂だけが修の周りで流れていた。
     ーー雨取麟児は半人と共に消えたらしい、、と。
     それを聞いて以降、修は気づいたと言うか、決めたのだ。半人と消えたのなら、半人を使って探せば良い。ならばその為には、半人を管理する最高組織ボーダーに入る必要があるのだと。そしてその組織に入隊する為には成体化した半人のパートナーがいる事が絶対条件となる。であれば、いち早くパートナーを見つけてやるぞ!と保護施設に足を運んだのが約5年前。一向にできないパートナー。
     それでも諦めてなるものかと、パートナーがいなくても組織に所属できないかを本部に直談判しに行く途中で偶然出会ったとある人にこの玉狛支部を紹介されたのが半年前。
     ……現状は言わずもがな、、である。

     その縁で知り合った宇佐美先輩の話では、半人とはその能力や希少性からいくつかのランクに分けられているらしく、より能力の高い半人とパートナーであればある程、その人間の将来の選択肢は広がる。簡単に言えば優秀な半人程、金と権力がついてくるのだ。
     もはや人間の価値はパートナーの半人の価値で決まると言っても過言ではない。
     だから上流階級層の人間はこぞって金を組織に投資する。少しでも高いランクの半人が保護されている施設に足や運べる様に。
     修自身、別段それを理不尽と思った事はない。経済力と言うのも歴とした愛情の一つである事に変わりはないのだから。
     それに半人にとって何を愛情とするのかは個体によって全く違うらしい、とも聞いた。
     半人は分かっているのだ、自分が1番望むものを与えてくれる人間を。
     とは言え、こんな状況になってしまっては自分が金持ちの家に生まれていればそれを理由に選んでくれた半人がいるのではないだろうか…と言う考えがたまによぎらなくもない。
     クラスで……いや、最早この学校でパートナーが決まっていないのは自分一人だった。
     一般的に遅くても小学校に上がった時点で、皆己のパートナーを選びだす。基本的に半人達との利害も一致するので早ければその日に、迷っていたとしても1ヶ月もあれば皆パートナーが出来るのだ。本来であれば…。
     すでに成体化に成功した生徒が出たと、今修のクラスでもその話で持ちきりだ。
     実際、成体化できる個体は全体の10%程であると言う現実がある中、確かにそれは凄い事だと修も思う。もしかしたら自分のパートナーも……とクラスメイトがそれぞれに思いをさせる事も仕方ないだろう。だが、それはそもそも相手がいればの話である。いなければ成体化もクソない。
     修は別に高ランクの半人を絶対パートナーにしたいなんて思ってはいなかった。(まあ、それならば効率よく物事が進められそうだなとは思うが…)。本当にどの子でも良いんだ、猫、魚、虫。例えどんな低ランクと判定される半人種でも絶対自分より能力があるのだから。
     なのに、それならばなぜ誰も自分を選んでくれないのだろうか?性格はそこそこきっちりしている方だと思うし、世話だってしっかりとやれる自信もある。餌をもっと変えてみれば良いのだろうか?それとも髪型とか見た目の話なんだろうか?いくら考えても自分に足りないものが分からない。
     まぁ、分からないからこその今なのだが。
     何度も接触を試みては、その都度彼らから向けられる憐れみの視線。
     人間だけが彼らが切望する成体化の鍵である事に変わりはないが、あくまでお前は選ぶ側ではないのだと言われている気分だった。今日もパートナーはできなかった、その事実がまるで自分には何も価値がないと言われている様なそんな気持ちを積み上げていく。
     それでも、諦めると言う選択肢はなぜか修自身にはないのだけど、繰り返され続ける変わらない虚無な現実に、あの期待で胸がいっぱいだった頃の気持ちはすでに修の中で死につつあった。
     「焦らなくても良いんだよ修君。まだまだチャンスはあるからね。」
     毎度1人で戻る自分にそう言い続けてくれる宇佐美先輩を思い出してはまた少しだけ胸の中が申し訳ない気持ちになった。彼女が沢山自分為に時間を割いてくれている事を修は知っていた。本来食べ物を持ち込む事自体禁止されているのを、特例で上に掛け合ってくれたのも彼女なのだと。
     「次は餌の種類を変えてみるか…。」
     もう少し匂いの強いものの方が興味を持って貰えるかもしれない…そんな事を考えながら修はゆっくり立ち上がる。
     ちょうどポツポツと雨も降り出した。今晩は土砂降りらしい。
     今日は早めに切り上げるべきだな、と修はタッパーを鞄の中に仕舞い込んだ。

     戻る途中思いの外降り出した雨の中、修は自分の目を疑った。
     見た事もない2本の角?耳が生えた黒い浮遊物がフワフワと浮いているのが見えたからだ。動物と言うよりは機械的で、一定の高さを保ちながらそれは雨の中をゆっくりと何処かに向かって進んでいた。
     半年近く通い続けているが、あんな物は見た事がない。
     一瞬考えてから修が思ったのは密猟者の存在だった。半人の幼体は高く売れる為、密猟者を取り締まるのもボーダーの役割の1つであると宇佐美先輩が言っていたのを思い出す。この広い保護区域の中、一度戻り報告してアレを見失うよりも、後をつけて少しでも情報を持ち帰る事が優先であると修は判断する。勿論、そこに雨が酷くなって自分が帰れなくなると言う視点はそっちのけで。

     そうと決めれば、修は一定の距離を保って気づかれない様にしながらも、見失わない様にその不思議な物体の後を追いかけた。
     普段歩かない様なぬかるんだ草むら、来た事もない小道、岩の隙間をぬけてどれぐらいの時間追いかけて来ただろうか?やがてたどり着いた薄暗い森の中で、人の高さ程の小さな鳥居とその奥に続く小さな石で積まれた階段が見える場所に修はたどり着いた。
     こんな所があったのかと、辺りを見回す修をよそに黒い浮遊物はその鳥居をくぐって、石段を上がっていく様に見えた。実際、雨の勢いが強すぎてもう殆ど視界が見えなくなっていたせいもあり、若干本当かどうかは怪しかったのだが。気づかれない様にと、あえてささなかった傘のせいで今更になって雨を吸った鞄がずっしりと重く感じる。これだけ降っていれば、途中通って来た小川はすでに増水して溢れかえっているだろう。
     結果的に戻ると言う選択肢を完全に失った今、修は覚悟を決めてその鳥居をくぐった。苔で滑る小さな石の段差を滑り落ちない様に周りに生えた少し長めの草を掴んで少しずつ登る。5メートル程登って階段の頂上らしき場所に修は辿り着いた。周りを大岩と茂る草木に囲まれたこじんまりした妙な空間。見渡す限り道の先はなく、あの謎の浮遊物も見当たらない。
     冷めた身体と胸ポケットに入れていたケータイから鳴り出した門限として設定していたアラーム音で、修はなんだか夢から覚めた様な気持ちになった。
     密猟者がいなかった事を確認できただけで良しと思いたい一方で、もしかして自分は幻覚でも見ていたんじゃないだろうか?と言う気にさえなってきた。そう思うと、だんだん宇佐美先輩をはじめ今頃自分を心配しているだろう人の事を思い出す。
     (最悪ここを出禁になるかもしれないか。それならそれで、またどうにかするしかないな……)と、修は頭のどこか片隅で考えていた。

     雨は強まるばかりだった。そんな中、不幸中?自業自得中の幸いと言ったとこだろうか、今いるこの場所は周りを背の高い岩と草木に囲まれていた為にいくらか雨がマシだと言う事に修は気づいた。そして寒さから少しでも雨を凌ごうと一番大きな岩の小さな影に体を滑り込ませる様に体を押し込む。
    「うわぁっっ!!」
     茂る草の隙間に尻を押し込んだところで、そこに地面がないと気づいたものの捕まる場所もない。
     時すでに遅し岩と地面の隙間に転げ落ちた修は、打ちつけた背中の痛みに悶えながら砂まみれの体でゆっくりと寝返りを打った。なんとか手探りで落ちたメガネを拾い上げて見たそこは、高さ1メートル程の薄ら差し込む日の光が中を照らしきれるほどの小さな洞窟だった。
     本当にこんな災難な日もあるんだなと、軋む体を起こした瞬間、ふと目に入った2つの赤い瞳に反射的に修の身体が飛び跳ねる。1人だと思っていた空間に実はもう1人、いや1匹いたのだ。お化けに出会ったような驚きでドッドッっと跳ねる胸を抑えながら、修は先程目の合った場所をもう一度注視した。
     この空間で1番影の濃いその場所にやはりさっきと同じ赤い瞳がそこにいた。なんだ、半人の幼体か……と、若干慣れてきた目でよくよく見ると、汚れてはいるものの体毛の白い動物のようだ。瞳が赤くて白いと言えばウサギだが、それにしては大きく牙らしきものも見える。とりあえず警戒させまいと、修は少し距離をとった。
     情けないことに足首を捻った様で、腰を後ろに引くぐらいが精一杯だったのだが、、。
     「ご、ごめん。驚かせる気はなかったんだ。」そう言った後で修は気づいた。目の前の獣が自分の足を引き摺る姿を見て、自分を食おうとしている事に。
     保護区域内では滅多にない事らしいが、本当にごく数例、飢えた半人が人間を襲ったり食べたりしてしまう事例があると聞いたことがあった。
     ヒュッと喉から空気の掠れるような音がした。
     まさか自分がそんな目に合うとは思いもしていなかったが、これも被食者の本能と言うのだろうか?修は今自分が食べられるのだと理解してしまったのだ。
     身体は修より小さいものの、動けない獲物を前に牙を剥き出しにしながらその獣はジリジリと滲みよってくる。光に当てられたその姿は、狐の様な姿に尾が数本ついた修が見た事もない獣の姿をしていた。自分が食われるかもしれないそんな現状にも関わらず、神秘的で異様なその姿を修は綺麗だなと思った。
     チラリと覗き見た外はさっきよりも雨が酷くなっていてどちらにせよ今這い出ていけば死ぬだう。それならばただ野垂れ死ぬよりもコイツの餌になって死んだ方がまだ意味があるんじゃないだろうか?ふと、修は直感的にそう感じてしまった事に驚いた。それから、(もしかしたら体の小さなコイツの事だ、腕一本ぐらいで満足するかもしれない…。)そんな考えさえよぎる始末だ。
     どうにせよ、自分を餌としてでも必要と求めてもらえた事が今の修にとってそんなに悪いものじゃなかったのだ。
     「おまえ、お腹空いてるのか?食べたかったら食べて良いよ、、。まぁ、できれば腕ぐらいで勘弁して欲しいんだけど、。」
     そう言って腕を差し出す姿に白い獣は一瞬驚いた様に見えたものの、素早く腕に噛みついて流れた血をすすりだした。腕の痛みに必死にうめきを抑えていた修だったが、しばらくすると噛む力が弱まり獣はぐったりとその場に倒れ込んでしまった。どうしたんだ?!とくったりする獣を見て逆に修が焦り出す。
    「おい、どうしたんだ?!しっかりしろ!」
     倒れた小さな白い体を抱き上げて、その体を冷やさない様に濡れた上着を脱いで温める。よくよくみると身体中傷だらけだった。
     何か少しでも回復させるものを、と隣の鞄を引き寄せて魚肉ソーセージを取り出して口元に持っていってみるがくったりとしていて反応がない。それならばと、修はさっき噛まれて今だに血のしたる自分の腕をさらに絞り上げて、わずかに開く口の中にその雫を垂らしていく。肉が飲み込めないなら、水よりも栄養のある自分の血で。修は痛みに耐えながら必死で自分の傷口を絞り続けた。
     どれ程の時間そうしていたのかは分からないが、やがて段々と自分の意識を保つのも難しくなって来た。血を流しすぎたんだな、なんて他人事の様に思いながら修はその獣を胸に抱えながらゆっくりと目を閉じた。どうか、この子だけでも助かります様にと。


    ーーー


    (ここはどこだろう?)
     修は辺りをキョロキョロと見回したが、なんだか白くぼやけた空間でよく分からなかった。やはり自分は死んでしまったのだろうか?と自分の掌を見つめてみるが透けてるわけでもなく、結局何も分からないままだった。

    「おまえ、なんで食おうとしたオレまで助けようとしたんだ?」
     突然後ろから降って来た幼い子供の声に思わず修は振り返った。振り返って先には、自分と同じ人の姿をした男の子が赤い瞳でこちらを見つめていた。 
     体の倍ぐらいある数本の揺れる白い尻尾と頭の上に生えた耳があまりにも愛らしくて、さっき唸って威嚇していた姿を思い出すと自然に笑みが溢れてしまっていた。
    「……なに笑ってんだ?おまえやっぱり変人ってやつなんだろ?半人のオレから見ても大分変わってるもんな。」
     そう言われて失礼な事言うなコイツーーと修は思ったが、よくよく考えてみればここにこの子のがいると言う事は、自分はこの子を救うことができたななかったと言う事なのだろう。それならば、嫌味を返すのはやめようと修は思った。
    「気を悪くさせたならごめん、そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、お前が思ってたよりもずっと可愛らしい姿だったから。」
     別の素直な気持ちに任せてそう言うと、目の前のその子は目を大きく開いてから頬を膨らませた。
    「……それで油断させて相手を食う算段かもしれないだろ?」
     そう言われて修も考えてみる。成る程、確かにそういう方法も人間を食うこの子からするとアリなのかもしれない、と。
    「ん?あぁ、そうだな…、たしかにそれも良い案かもしれないな。」
     今ではありえないが、そうして姿で人を惑わす事が出来れば、情報を引き出す良い作戦が練れるかもしれないと修は思った。
    「やっぱりおまえ、変なやつだな。」
     何か気を悪くさせる事を言ったのだろうか?
    「すまな「お前は、オレが怖くないのか?」
     謝罪の言葉を遮る様にその子は修に詰め寄った。

    「怖くないよ。」
     素直な気持ちだった。
     それを聞いて、その子は先ほど噛みついていた方の修の手を掬い上げて優しく撫でた。
    「……だったら、お前はオレが必要か?」
     なんでそんな事を聞くのだろう?そう思いはしたが、修は素直に告げた。
    「あぁ。僕にはお前が必要だ。」
     僕には半人が必要だった。
     僕を選んでくれるたった1人の半人が。

    「……そうか。だったら、オレにもお前が必要だ。」
     そう言ってその子は姿相応にニコリと修に笑いかけた。
     もしかすると、この子もずっと探していたのだろうか?自分を選んでくれる人間を。
     本当は生きている時にそれを聞きたかった、と修は思う。それを聞いた所で、もう目の前のこの子とパートナーになれる事はないと分かっていた、、けれど、それでも修はとてつもなく嬉しかった。今自身がこの子を選び、選ばれたと言う事が。
    「そ、そうか、、。ありがとう。」
     情けなく溢れた涙を拭いながら修はお礼を言う。
    「おれは、いなくなったおれの友達を探してたんだ。その為に、ずっとオレに相応しいパートナーを探していた。なぁ、おれのパートナーになってくれ。いや、なってください。」
     目の前の白い耳がピコピコと動いていたと思っていたら、急にその子が頭を下げて手を差し出して来た。

     可愛らしくも潔しな姿に、思わずまた笑みが込み上がってくる。たとえこれが死んだ後の夢幻であろうと修はやっぱり喜びで胸が張り裂けそうだった。 差し出された小さな掌をギュッと握り返す。
     自分も同じ気持ちなのだと。

    「ーーよし、それじゃあ本契約。」
     感動で胸がいっぱいな修をよそに、その子はコロっと切り替えて修の身体を押し倒した。

    「たしか、、契約ってお互いの何かを交換し合えば良いんだったけ?」自分の上にのし掛かったその子がなにやらぶつぶつと呟いている。
     確かに、本来であればパートナーとして契約を交わす際『お互いの持ち物を交換する』と言う形式を取ることになっている。
     体毛であったり、鱗であったり、それを受け取った人間側は自分の1番大切にしている物を差し出すと言うのがセオリーだ。そうして2人は永遠の絆を手にすると言われている。
     でももうすでに自分達は死んでしまっているし、もちろん修に手持ちの物など無い。
     このやり取りでさえ自分達の自己満足の幻想なのだ。その気持ちだけで充分、、そう言いかけてまた言葉を遮られる。

    「おまえ、名前は?メガネ君?」
     そう言えば言ってなかったか?と修は今までのやり取りを思い返す。

    「メガネ君じゃない。三雲修だ。」
     倒された衝撃でずれたメガネを、なんだか生じた気恥ずかしさから今さら整え直した。

    「そうか、オサムか。」
     ニッーーっと笑った顔が見えて、その次の瞬間には目の前が真っ白になった。
     額にかかるフワフワの髪と、唇に触れた柔らかい感触にーーえっ!?と思うまも無く唇を割入って来た舌に翻弄されるまま、修は流れ込んできた唾液を飲み込んだ。やがて最後にじゅるり舌を吸われてどちらとも分からない唾液で濡れた自身の唇をペロりと舐め回したその子が離れていくのをなんだか薄れていく意識の中、修は眺めていた。
    「それじゃあ、これからはずっと一緒だな。」
     なんだかビックリしたけど、最後に幸せな夢を見れたとぼんやりする頭で思った。
    「あ、そうだ!!忘れてた!ーーー!おれの名前はーーーーー!」
     沈んでいく意識の向こうであの子が何か言っている様な気がしたけど、修の瞳がこれ以上開くことはなかった。

    ーーー

     白い見慣れない天井がみえる。
     ゆっくりと顔を傾けると、よく見知った美人な顔とチャームポイントのメガネがぼんやりと視界に映った。
    「良かった、目が覚めたんだね修君。本当に皆んな心配したんだよ。」
     はいーーと、なれた様子でメガネを掛けてくれる宇佐美先輩の様子を見て、ようやく自分は助かったのだと修は認識した。

     「迅さんがね、修君を見つけて保護してくれたんだよ。あと応急処置とかも。」
     そう言われて包帯でぐるぐるに巻かれた足と腕にじんわりと痛みが戻ってくるのを修は感じた。
    「色々修君には言わなくちゃいけないきつーい事もあるけど。今はそれよりも、はいこれ。」
     そう言って宇佐美先輩は修のお腹の上に赤色のラインの入った小さな首輪を置いた。
    「おめでとう、その子が修君のパートナーなんだね。」
     思わず「えっ?」と返した修に、宇佐美先輩がニコリと微笑み返した。
     自分と同じ布団の中にくるまっていた白いふわふわがピクリと動いて、ノソノソとお腹の上に乗ってくる。

    「じゃあ、名前は何にする?」
     この子の……パートナーの名前だよ、そう宇佐美先輩に言われて修は自分の顔を覗き込んできた赤い瞳を見返した。

    ”「ユーマ!オレの名前はクガユーマだ!」”
    夢かもしれないあの時の言葉がフッと修の中に響いた。

    「ユーマ。……クガ・ユーマにします!」
     そう言って修は白いモフモフのパートナーを優しくも力一杯抱きしめたのだった。



    •ユーマ
    元は狐の半人。以前密猟者に捕まり殺されかけた時に親父がユーマを庇って死亡。その後気づいたらこうなってた。消えた友達のレプリカを探している。今は九尾の化け狐なので幻覚を見せる事もできる。成体化してからは自分と修がラブラブと言う事を見せつける幻覚を修に内緒で振り撒きまくっている。
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