初めてのバレンタインをあなたに「つまりアルビーに手作りしたいのね」
「っ、ん、まあ…そう…」
俺もその配信の切り抜き見たけど
「バレンタインにあげたら、アルバン
めっちゃ喜んでくれるかなって」
色素の薄い耳から頬まで全部赤くして
ああサニー、めっちゃ可愛いよ君
「俺もふぅふぅちゃんにつくりたいし
一緒に作ろう、サニー」
「ありがとう!浮奇うき大好き!」
ぎゅうっと抱きついてくるこのAU大型犬。
弟みたいで可愛くって俺も
ついつい甘やかしてしまう
可愛いのもマイペースなところも
彼のいいところだと思う。
そして時々狂気じみているところも。
ふふちゃんがいなかったら、かなりいい男だったと思うしヴィオレスコも悪くない。
でも今俺にはふふちゃんっていう
超イケてるハニーがいるし
サニーにはアルビーがいる。
仲良くならんでお菓子作りも友達の特権だ
「まずはダークチョコレート1kgね」
「多くない!?」
「…え?そう…?」
「え、いや、普通200gとかじゃない…?」
「ふふ、サニーったら。
200gなんて朝食べて終わりだよ」
ファッジブラウニーの恐ろしさをわかってないねえ
「ね スターゲイザーズ」
器用に型の準備をしてくれているジェリー達は
うんうんと楽しそうに頷く。
首を傾げながらもサニーとブリスケッツ達は
チョコを刻み始めた。
祝われるのが苦手なふふちゃんだから
さりげなく置いておいて。
俺はコーヒーを淹れて、
ふふちゃんにはホットミルクを入れてあげる
冷えてしっとりしたブラウニーを
サイドテーブルから引っ張って
あったかいシーツの中で2人で食べる妄想中。
甘く汚れた指を舐めて、唇も舐めて…うん、いい…
「う〜ぎ〜、楽しそうなところ悪いけど刻み終わったよ」
「あっごめん、ありがとう」
「次は?」
「次はこのチョコとバター1ポンドをボウルに入れて溶かす
ココナッツオイル入れてもいいんだけどね」
「1ポンド…」
「このレシピあんまり測らなくていいから楽なんだよね」
「そういう問題かなあ」
くるくるというよりは潰すように撫ぜられるボウルの中の食材たち。ネチっと立てられる音が
エッチなだなあなんて思ったりして。
「サニーはどうやってアルビーにあげるの?」
「どう…?」
「そこが大事なんだよ!プレゼントだよプレゼント!」
「え、あ、考えてなかった……」
サニーらしいと言えばサニーらしいけど。
そこが1番大事なんじゃん。
どうやって渡すのか、なんていうのかとかさ。
「ほっぺにチョコついてるよ…
ドキッみたいなのは考えてたけど…」
「…うん」
人のこと言えない。
うんうん唸りながらバターがどんどん潰されていく。
バターとチョコの甘い香りがくすぐったい
「結婚してください…?」
「WHAT THE HELL」
「流石に冗談だよ、はは!
でも…やっぱり俺のものにしたい…気持ちが…」
か かわいーーーーーー!!!!!!
めっちゃ今この男食べちゃいたい!!!
「ってまだ付き合ってなかったんだ」
「なんか言いそびれちゃって…
…それも伝えたい、よね」
「ふふ、そうだね」
さらさらになったチョコレートを
セントラルヒーティングの上に乗せ
ボウルに卵を割り入れる。
15個の卵に次はお砂糖。
「浮奇、待って、流石に砂糖多くない?
どんだけ入れるつもり?」
「ん?ブラウンシュガー1kgだよこれ全部」
「アメリカンスイーツ流石に怖くなってきた」
「サニーとお菓子作るって言ったらいろんな人に
頼まれちゃったから纏めてと思ってね」
「そうだったんだ…」
「お砂糖溶けるまで混ぜてね」
「浮奇なんにもしてないじゃん」
「計量してる」
「測らなくていいレシピなんでしょ」
重たい砂糖を卵と合わせると
だんだんと溶けて混ぜやすくなってくる
血管の浮き出た腕?いいなあ。
流石に俺もちょっと鍛えようかな?
「さらさらしてきた…っ、
浮奇はファルガーとは料理しないの?」
「ん?するよ?ふふちゃん超料理上手だもん。
でも一回試したいギミックがあるとか言って
手のひら外して泡立て器つけて
ミキサーサイボーグになった時は
笑い止まらなくて全然料理進まなかったなあ…」
「なんでそんな面白いの送ってくれなかったんだ」
「それどころじゃなくって」
しかも完璧なメレンゲを立てるものだから
本当に面白すぎて。その時は危うくシフォンケーキ台無しにするところだった
完璧に砂糖が溶け込んだ卵を半分チョコに入れる
「はい混ぜて」
「うわあ重い。これ入りきる?」
「多分」
しっかり混ざったらもう半分。
下の方に砂糖が残ってるかもしれないから
しっかりゴムベラで綺麗にする。
「あと牛乳半カップと、ラム酒1/4カップ」
「おっっっも」
「アルビーに愛、伝えるんでしょ!」
「っく、浮奇許さん!」
「うふふ、しっかり乳化したら、
小麦粉2.5カップとココア2/3カップ」
「くぅ…!!!!!俺の愛、重いな…!?」
「俺の愛もね♡」
重たいボウルを混ぜる姿は後ろからしっかり撮影させてもらった。
あとでアルビーにも送っておく
できた生地を鉄板に流し込む
ハーフパン2枚と、残りは適当に。
「ねえサニー、飾りは持ってきた?」
「うん、ほら、猫のビスケット。上にのせようと思って。ハートもある」
「わぁお、めっちゃ素敵。俺はグリオットチェリー、あとはすみれの砂糖漬け」
「なんかsussyじゃない?」
「メインは俺だから前菜はそれでいいの」
生地の上に狭しと並べられたクッキーや
埋め込まれたグリオットチェリー。
すみれの砂糖漬けは媚薬だって知ってた?
あとは320℉で30分。
上がcrackしてきたら焼き加減は最高、
中はとろとろだから、固まるまでは切れない。
「that’s all ~」
髪ゴムを解いてソファに座る
洗い物も済ませてリビングに向かえば
サニーがコーヒーを淹れてくれていた
「浮奇〜ありがとう〜」
「気にしないで、筋肉の写真50枚くらいでいいよ」
「わあ、もう絶対浮奇に貸し作らない」
「いくらでもどうぞ」
コーヒー飲みながら一息。
誰かと料理するもの楽しいよね
「もうすぐ焼ける?」
「まだちょっとかかるかなぁ。
あ、告白プラン考えようよ」
「ぜっっったい嫌だ」
「素敵な一晩を約束するよ?」
外は雪が積もってる
明日は俺たちの愛で溶かしちゃうけど
静かな家にチョコレートの香りが漂って
愛しい人たちの帰りを2杯目の薄くなったコーヒーと半分のブランケットと待つのだった。