心臓を掴む どうか、これ以上、私の心に入ってこないでくれ。
そう思うようになったのは、いつの頃からだっただろうか。
人との距離の取り方が解らない。それは自分の生い立ちに問題があった。しかし、それは社会に出てから気付いたことで、その環境で育っている時に、それが問題であるとは思いもしなかった。
その歪な家庭環境で育ったが故に、他人と接すると、その不可解な言動に心を乱された。
どうして、この人は自分にこんな親切にしてくれるのだろうか?
幼い自分にとって、それは最大の謎だった。
誰の利益になることもしていない、誰の役にも立っていない幼い自分に対し、誰もが我が事のように喜怒哀楽を表現してくれる。
その心の機微に触れる度に吐き気がした。
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