花にアニメなどのキャラクターに恐竜などの動物。
色とりどりのパッケージ。
家族に買い物を頼まれた、とスーパーに寄る侃についていって、会計を済ませるのを待つ間、昨日まではなかったコーナーが目についた。
もう、そんな時期かと思うが、いかんせんろくな思い出がない。
自分が唯一、側にいることを認めた男に、どうしようもないトラウマを植え付けてしまったという一点においては特に。
バレンタインデイと描かれたコーナーに並べられた様々な種類のチョコレート。
その中の一つのパッケージがふと目にとまって手にとる。誰かに似ていると思うと、自然に口の端に笑みが浮かんで、ふてぶてしい顔をした黒猫をしげしげと眺めた。
「お待たせ」
会計を済ませた侃が永臣が立っていた場所の周囲に並べられている物を見て顔を顰める。
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