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    ほしう💫

    @hosiu_0125

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    ほしう💫

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    魅音ちゃん人間、詩音ちゃんけもちゃん(完全に動物にはならない)のお話です。気が向いたら逆も書きます。

    詩音のせいだから。 犬を飼っている子が家に帰って出迎えてくれるのが嬉しい、という話をよく聞く。しかし私はそうは思わない。暑苦しくて、身動きが取れないだけだ。
    「しおーん、じゃまー」
    「えー、お姉が言ったんじゃないですか。五時になったらいいよって。」
    詩音が私の首元に腕を絡めて、暇そうに私の課題を覗き込む。そしてたまに頬擦りをしてくる。こいつ、終わってるからって…と怒りたくなる。でも時間指定にした私も悪い。五時には課題終わると思ってたんだもん…
    「詩音、耳出てるよ。」
    「ん、ほんとだ。最近まずいなぁ。」
    ちらりと視線を向けるといつもは隠している獣としての耳がひょこりと顔を出している。どういう仕組みなのか分からないけど、耳を隠すことができるらしい。なので詩音がそういう半人半獣だというのは私だけとの秘密なのだ。
    「ま、いいか。お姉が上手いことカバーしてくれるし。」
    「尻尾は流石に無理だよ…罰ゲームって事にするの?」
    「ですね、そう言えば信じてもらえそう。」
    楽観的にけらけらと笑う詩音とは対照的に私は心にモヤが広がる。人間の姿を保てないということは、詩音の中での人と獣のバランスが取れなくなっているということ。いつかはこんな風に過ごせなくなるかもしれない。下手したら、周りに見つかって殺される…なんてこともあるかもしれない。血の気が引いていく。もしそうなったら、私はどうするべきなんだろう。
    「…お姉?」
    「あ…え、ごめん。何?」
    きょとんと首を傾げながら見つめてくる詩音。その目が獣に変わる日が来るのかな。そう考えると怖かった。確かに詩音の一部なのかもしれないけど…知らない詩音を見るのは怖い。
     その時だった。
    「ん…っ」
    不意に唇に柔らかいものが触れた。優しく温かいそれに今まで考えていたこと全てが溶けて消えていく。
    「今は私だけ見てて、ご主人様。」
    詩音はにやりと口元を上げながらいつもとは違う呼び名を使う。考えてたのは詩音のことなんだけどな、と思いながら頭を撫で、長い髪を伝い手を背中へ、尻尾の付け根へ滑らす。すると詩音の身体がびくりと跳ねる。
    「ここ弱いもんね。」
    「…お姉のくせに。」
    どこぞのガキ大将や金持ちお坊ちゃまの台詞みたいな事を言うな、と苦笑しながら私は首元をくすぐる。こういうところも弱いらしい。…ここ弱いのって犬だっけ、猫だっけ?まぁいいや、詩音が喜ぶなら。
    「やだ…お姉、ちょっと…!」
    「んー、ご主人様とか言って煽ったのはどっちだっけ?」
    いつもは生意気で、私より幾分かしっかりしてる詩音も獣の部分は弱い。私が唯一詩音に優位に立てる時。このチャンスを逃してはいけない、次いつこの時が回ってくるか分からないのだから。
    「課題…しないんですか。」
    気を逸らしたかったのか、詩音はぽそりと呟く。私は開いていた課題をぱたんと閉じた。え?と目を見開く詩音。取り繕おうとしても素直に反応してしまう姿が可愛らしい。
    「終わらないの、詩音のせいだから。」
    私は詩音に口付ける。可愛く鳴く声が甘く私の心を溶かしていくのだった。
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    ほしう💫

    DOODLEこのカプどう足掻いても一筋縄じゃいかないのが好きです。
    「こわい」をだきしめて 私たちは互いに「こわい」を抱いて生きている。
     あの時が怖くて、今の幸せに目がくらみそうになりつつも、いつかあの時が戻ってくるんじゃないかって恐れてる。私たちはあの時を「過去」として受け止められないでいた。
     夜にどちらかが悪夢を見れば、どちらかが支える。でも私はこわい。二人とも余裕がなくて周りが見えなくなって…ついには貴方を傷つけてしまうんじゃないかって。
     さらりと貴方が私の頭を撫でるとき、ひどく泣きそうになる。ずっと待ち焦がれていたその感覚に今も尚安心し、こわくなる。この感覚がどんな形であれどなくなる日が来るのかもしれない。
    「どこにもいかないで。」
    そう言えたならどれだけ楽だっただろう。

     そういう意味ではお姉が、圭ちゃんが、沙都子が、レナさんが、梨花ちゃまが羨ましかった。互いを信頼し、手を伸ばしあって、互いにその手を掴み合う。私は手を掴むことがこわいから。貴方に…悟史くんにさえも。貴方も同じで、きっと私たちは信用してるけど、信頼できていない。頼れない。助けてって言えない。互いにこわいものを持っていて、それを補う儚く優しいものが互いだから。いくら言葉を掛け合っても、愛を伝えても、身体を重ねても、埋まらない何かがそこにあって。それを無かったことにしようと私たちは笑っている。踏み込んで、傷つけるのが怖いから。
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