「人を信じるって、疲れるんだね」
自分に繋がれていた契約の糸は自らの意思で切り取った。そんなこと容易いものだが、それでも身体の一部を無理やり切り取るようなものだ。痛みがないわけではない。心に大きな穴を開けたせいで身体が寒い。顔が濡れているような感覚があるのは気のせいだ。
「俺は魔物としてひとり生きる。それが一番良いんだ。そうしたら……この世は幸せになる」
足元には冒険者だったものが沢山落ちている。生きているのかも分からない。それは茨にとってさして問題になるものではない。しっかりとした足取りで長い茨道を歩き続ける。
「……【***】、俺、眠ることにするよ……」
そう呟いた彼の姿は徐々に変形し、その形を城の奥底に溶け込ませた。自分の身を護るように生い茂る茨は太く長く、鋭い棘を纏って一瞬のうちに城全てを飲み込んだ。