撫でられた頬がまだ熱いアッシュが小さな寝息をたてている。
ほんのり開いた唇から、規則正しい呼吸がこぼれていた。
陽だまりに溶けたミルクティー色の髪が、その額にふわりとかかり、やわらかく揺れている。
彼の腕の中には、もふもふとした真っ白なうさぎ。
どちらも、木漏れ日の差す小さな部屋の片隅で、丸くなって眠っていた。
ノーランドは、通り過ぎるはずだった。
だが、背を向けかけたその瞬間——
「⋯⋯くしゅん」
軽い音が耳に届く。
まだ年若い少年のくしゃみは小さく、まるで甘えた動物の鳴き声のようだった。
ノーランドは足を止め、振り返る。
部屋の奥、陽の当たる板の床の上で、アッシュがうさぎを抱きしめたまま、寝言のように「うぅん⋯⋯」と声をもらしている。
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