目の前のものは、死体である。
昨日まで息をしていた、俺の事を暖めてくれた。大事な、血縁だ。
しかし、死んでいる。
周りの温度がかなり低い。薄着ではないが、目の前にある死体のせいでもあるだろう。奥歯がかちりと音を鳴らした。唯一の熱源である自分の体温を逃さないように、服を握り締める。
口が開いている。まだ生きているように、血色がある。目もうっすらと開いている。首元に傷がある。上に掛けられている布からギリギリ見える細い指の爪の先に、黒い、何かが詰まっていた。おそらく血だろう。
頭を撫でれば、髪がひとつひとつまとわりついてきた。もう、祖母の綺麗なさらさらとした髪はない。
手を離そうとすると、逃がさないというように髪が縋りついてきた。まるで、生きているように。
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