ミントキャンディ 居残り練習に付き合ってもらった、二人きりの帰り道。
こほ、と小さな咳をすると、気づいた竜崎さんが、すかさず大丈夫かと声をかけてくる。
「大丈夫です。お気遣いどーも」
言いながら喉の辺りを一撫ですると、ポケットを探った竜崎さんが、俺の手をとった。
「……なんですか?」
「のど飴だ。少しはすっきりするだろ」
ころんと手の平に置かれた包みを、礼と共に受け取って、素直に口の中に入れる。
スッとするミント味だ。
ちょっと、竜崎さんに似てる。
浮かんだ思考に小さく笑って、口の中でまるい飴を転がした。
からころ。徐々に溶けていく小さな飴玉がなんだか惜しくなって、手元に残った包みを見る。透明なそれには、どこのメーカーのものかなんて、ひとつも書かれていない。
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