フレンチフレンチトースト・キス頃合いか…と手をかざすタイミングで、適温を知らせる小さな電子音が鳴った。
熱したフライパンへバターを落とし、溶けきった所へ一晩 液に漬けていたパンを並べて焼き色が付くまで待つ。
「………」
バニラの甘たるさと焦げたバターの匂いが混じり合い、部屋に充満する。
口にする時には気にならないが、焼いている時の匂いは好きじゃない。
「すん……」
この間に冷蔵庫から牛乳を取り出しコップへ。こちらも蜜漬けした果実のマリネを小ぶりのガラスボウルへよそう。ほどよく両面に焦げ目の付いたパンを取り出し皿へ。
粉砂糖は――
「……やめておこう。」
それらをトレーに乗せて寝室へ向かった。
「朝食を持ってきた。」
「……う」
宇佐美はまだベッドの中にいて、シーツの間から顔だけ出した。
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