酒癖「ほう……これは」
仕事を終え、いつものように三杯酔で講談を聞き、自宅へ戻った。時に仕事が長引いたり、留雲に会って食事をすることもあるが、毎日がそういう訳でもない。
日が港の方へゆっくり沈み、夜が訪れる。今日も平和な一日であったなと、鍾離は平穏な心持ちであった。
自宅へ戻ってからも、すぐに眠る訳ではない。茶を淹れ、書物を読み、一人の時間を過ごした後、睡衣に着替えてから寝台へと上がる。
その、着替えようと衣装棚へ近づき、寝台が目に入った時のことだった。
──魈が、鍾離の寝台のど真ん中で眠っていたのである。
あまりに景色に溶け込み過ぎて、思わず目を疑ってしまった。そもそも、彼がこの家にいる気配になぜ気づかなかったのだろうか。いるはずがないと思い込んでいたせいからかもしれない。
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